| 研究課題/領域番号 |
19KK0208
|
|---|
| 研究機関 | 信州大学 |
|---|
研究代表者 |
佐藤 隆 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 特任教授 (70510436)
|
|---|
| 研究分担者 |
下里 剛士 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00467200)
荻田 佑 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (50738010)
重盛 駿 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教(特定雇用) (90803487)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
|
| キーワード | 遺伝子組換え乳酸菌 / 肺がん / 経気道治療 / 免疫チェックポイント阻害 / 生物資源医薬 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究は「生理活性標的物質を分泌する乳酸菌」の「経気道投与」による呼吸器疾患治療の可能性を提唱する研究成果（Antioxidants 2020;9:1049）を基盤とし、「免疫チェックポイント阻害乳酸菌」による肺癌発癌・進展予防効果を検証する国際共同研究である。信州大学でのルイス肺がん細胞株の同所性移植による致死的肺がんモデルでの生存延長効果と、米国テキサス大学・MDアンダーソンがんセンターでの自然発癌モデルの発癌予防効果の検証を踏まえて、早期の臨床導出を目指す内容である。これまでに、免疫チェックポイント阻害乳酸菌としてLactococcus lactis NZ-9000株への標的遺伝子発現ベクター導入により、1）Programmed cell death (PD)- 1 阻害作用を有する低分子一本鎖可変抗体フラグメント（single chain variable fragment：scFv）、2）PD-L1 scFv、さらに3）Cytotoxic T-Lymphocyte-associated protein (CTLA)-4 scFv産生組換え乳酸菌を構築し、生理的活性を確認した。なお各種ベクターはKEGG DRUGエントリD10316 [PD-1]、D10773 [PD-L1]、D04603 [CTLA-4]の軽鎖配列情報をもとにNZ-9000株のコドン使用頻度に最適化して作成した。今年度は、これら乳酸菌体由来物質の生理活性評価ならびに治療投与の最適化を行い、同所移植肺がんモデルの5週後生存評価で、ベクターコントロール投与群では0％の生存率が、PD-1投与群とPD-L1投与群でいずれも67％の生存率へ有意な延長効果を確認した。本研究成果を基盤として令和4年度中の米国での動物実験実施の目処を構築した。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでの非臨床試験開始を目標に研究員の派遣・渡航準備を進めたが、新型コロナウイルスの蔓延による海外渡航制限のため、当初予定された進捗が得られなかった。しかしながら、信州大学で構築した免疫チェックポイント阻害乳酸菌体は、信州大学の規定する適切な手続きに則ってテキサス大学への移送が実現しており、3回目の新型コロナワクチン接種後の派遣実現を目指して調整を続けている。この間に、「免疫チェックポイント阻害物質産生乳酸菌種の拡大」をすすめ、PD-1・PD-L1 阻害に加えてCTLA-4 scFv産生乳酸菌の構築に目処が立つなど、現地での非臨床試験の多様化に向けた準備が進められたことは大きな成果と考える。現在までの進捗状況は、新型コロナウイルス蔓延の影響から、令和3年度に予定していた海外研究機関での実施内容の大部分が令和4年度に持ち越しとなったことから、全体計画の延長を予定している。
|
| 今後の研究の推進方策 |
令和3年度中に、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでの非臨床試験開始を目標に研究員の派遣・渡航準備を進めたが、新型コロナウイルスの蔓延により当初予定された進捗が得られなかった。しかしながら、信州大学で構築した免疫チェックポイント阻害乳酸菌体の一部（PD-L1 scFv産生乳酸菌）は、大学の規定する適切な手続きに則ってテキサス大学への移送が実現しており、3回目の新型コロナワクチン接種後の派遣実現を目指して調整を続けている。この間に、「免疫チェックポイント阻害物質産生乳酸菌種の拡大」をすすめ、PD-L1 阻害に加えてPD-1 scFv産生乳酸菌やCTLA-4 scFv産生乳酸菌の構築に目処が立つなど、現地での非臨床試験の多様化に向けた準備が進められたことは大きな成果と考える。今後の研究の推進方策として、米国での自然発癌モデルでの発癌予防・進展予防効果の検証を完遂することを目標に、全体計画を延長して当初計画の完遂を目指す方針である。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により令和2～3年度に予定していた複数の大学院生派遣（計6,000,000円を計上）ならびに2名の教員の短期派遣（計1,600,000円を計上）が延期となったため、いずれも次年度使用に持ち越しとした。同様に、令和3年度に複数回予定をしていた乳酸菌の米国移送も、現地研究員の予備検討用の使用量に留め、新たな移送費用も次年度に持ち越しとした。3回目のワクチン接種終了者から可及的速やかに渡航調整を行い、令和3年度に予定していた派遣計画の実施を図るが、現時点ではテキサス大学の共同研究者と緊密に連絡を取りながら、テキサス大学在籍の博士研究員の協力も要請しながら準備をすすめ、研究計画の2年延長を念頭に適切に使用する。
|
