研究課題/領域番号 |
19KK0212
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷内 一彦 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50192787)
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研究分担者 |
古本 祥三 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (00375198)
原田 愛子 (石木愛子) 東北大学, 大学病院, 助教 (30778634)
岡村 信行 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (40361076)
原田 龍一 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60735455)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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キーワード | 分子イメージング / 神経変性疾患 / ミスフォールディング / グリオーシス / PET |
研究実績の概要 |
前年度にオーストラリア・オースチン病院との国際共同研究にて、[F-18]SMBT-1のモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)に対する結合選択性を明らかにすることができたため、今年度は対象を拡大し、健常高齢者、アルツハイマー病患者(AD)に加えてアミロイドPET陽性の健常高齢者(Preclinical AD)や軽度認知障害(MCI)を対象に[F-18]SMBT-1 PETを施行した。これらの症例は合わせてアミロイド、タウPETが施行されている。その結果、健常高齢者と比較してAD、MCIだけでなく、Preclinical ADにおいても[F-18]SMBT-1の有意な高集積を認めた。以上のことから、アストログリオーシスは早期の病理学的変化であることが示唆された。実際、アミロイドの沈着を認めるがタウの沈着を認めなかった剖検症例の剖検脳試料を用いたオートラジオグラフィーの結果、アミロイドの沈着がある部位と概ね一致して[F-18]SMBT-1の集積を認めた。少なくともタウの沈着が起こる前にはアストログリオーシスは起きており、アミロイドに反応してアストログリオーシスが起こっているように考えられた。この研究ではタウPETトレーサーとして[18F]MK-6240を用いて実施したが、[F-18]THK-5351からの最適化からオフターゲット結合の少ない新しいタウPETプローブ[F-18]SNFT-1の開発に成功し、知財化を進めている。また、臨床評価をするために自動合成装置の開発を進めている。また、βシート結合化合物を数多く含む化合物ライブラリーからのスクリーニングにより、αシヌクレインやTDP-43を明瞭に染色する化合物を同定した。世界のアルツハイマー病研究者のWEBサイトALZFORUMにて、東北大学とメルボルン大学の国際共同研究の[F-18]SMBT-PETの研究が紹介されている。 https://www.alzforum.org/news/conference-coverage/astroglial-markers-poised-stardom
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メルボルン大学での[F-18]SMBT-1の臨床研究においては順調に対象を拡大し、興味深い結果が得られている。一方、東北大学での臨床研究はサイクロトロンラジオアイソトープセンターの改修工事もあり、遅れている。新たなPETプローブの開発は比較的順調であるが、サイクロトロンラジオアイソトープセンターの改修工事によりPET核種を使用した実験が中断されている。また新型コロナ肺炎のために海外出張ができずに、WEBでの情報交換しかできない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
オーストラリア・オースチン病院での[F-18]SMBT-1の臨床研究においてはアミロイド、タウ、アストログリオーシスの縦断PET検査を実施、アミロイド、タウとの関係性とアストログリオーシスの病態形成における役割を明らかにする計画である。また、[F-18]標識化合物での生物学的評価を進められるように前駆体の合成を進め、東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンターの改修工事が完了次第、[F-18]標識化合物での評価を実施し、新規プローブの探索および最適化を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ肺炎のために海外渡航ができず、WEBでの情報交換に留まり、現地での研究ができていないため。 令和3年度は中断していた東北大学での臨床研究を再開する予定。また外国への渡航状況が許せば相互に交流を行い、個別に行っている研究を統合して発表することを実施したい。
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