研究課題
我々は、従来から1つのプリオンと考えられてきた致死性家族性不眠症(FFI)の我が国の家系において、全く異なる臨床像を示した2例が、全く異なる感染性を示すこと、つまりプリオンが2種類存在することを報告した。1つのプリオンは孤発性クロイツフェルトヤコブ病(CJD)の視床型と同じ感染性を示すM2Tプリオンであり、新しいプリオンは今までに報告のなかった皮質型のプリオンとしてM2C(sv)プリオンと命名した。これはコドン129Metのプリオン蛋白より構成されるタイプ2の皮質型(Cortical)でしかも小さな海綿状態(small vacuole)を示すプリオンという意味で命名した。今回の国際共同研究によって、わが国だけでなく、最初にFFI家系が報告されたイタリアにおいても、FFI症例でM2TプリオンとM2C(sv)プリオンが存在していることを明らかにすることが出来た。さらに、わが国の孤発性CJDの症例を詳細に検討するとM2C(sv)プリオンは予想をはるかに超えて数多くの症例で存在することが明らかとなった。従来M2Cプリオンと言えば病理的に指摘できる大きな空胞からなるM2C(lv)プリオンで、これは病理的に海綿状脳症の空胞と区別可能であったが、空胞の大きさでは区別できないM2Cプリオンが存在することが徐々に神経病理医にも浸透してきている。さらに、我々は本研究の到達目標を遥かに超えて、M2C(sv)プリオンとM2C(lv)プリオンの感染性が我々の作成した新しい動物モデルへの感染性で区別できることを見出しつつある。本研究は、FFIという特殊な家族性プリオン病から見出した新しいプリオンが思いもかけず孤発性CJDに広く分布するようなプリオンであることを証明し、しかも従来の皮質型タイプ2プリオンとも異なる感染性を持つことを証明する予想外の方向まで進展した研究成果となった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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