研究課題/領域番号 |
19KK0218
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
竹内 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451999)
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研究分担者 |
井原 健介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50770210)
古川 哲史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80251552)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 / TBX5 / 非コード長鎖RNA / CRISPR-Cas9 / i-GONAD / 転写制御 |
研究実績の概要 |
(1)モデル生物用いた機能解析:*Tbx5とTbx5ua(別名:Gm5563)の両遺伝子破壊マウスの作成。Tbx5とGm5563において遺伝学的な相互作用があるか検討するために、Tbx5遺伝子破壊モデルおよびGm5563遺伝子破壊モデル、両遺伝子同時破壊モデルの作成を試みた。従来の発生工学を用い時間を要するため、i-GONAD法の立ち上げを行った(Nat. Prot. 2019; BMC Biotechnol. 2018:共同研究開始)。変異効率を向上させるために、プロトコルの改変を行い、単一遺伝子破壊(Tbx5-/-およびGm5563-/-)なら平均して80%の胚において、2遺伝子同時破壊(Tbx5-/-;Gm5563-/-)は50%の胚において観察され、重度の心奇形を伴っていた。さらに、Tbx5+/-;Gm5563-/-胚においてもTbx5-/-胚と同様の心奇形を生じたことから、Gm5563はTbx5遺伝子の転写および機能を正に制御していると考えられる。:*Tbx5ua(Gm5563)遺伝子、Nkx2-5ua(Gm17382)遺伝子の発現様式。ヒト先天性心疾患発症頻度の高いTbx5とNkx2-5遺伝子座近傍に存在する2つの非コードRNA(Gm5563およびGm17382)の発現様式を追跡した。マウス胚発生および出生後の心臓4区画(左右房・左右室)におけるTbx5とGm5563は発現様式が酷似していた。一方、Gm17382は右房・右室での発現は高いが、左房・左室での発現は確認できなかった。 (2)ヒト心疾患重症化の起因因子:*(1)での結果を踏まえ、国際学会(コロラド・米国)において、海外共同研究期間代表者(Bruneau部門長:グラッドストーン研究所)とヒトGm5563およびGm17382の探索およびヒト心疾患患者における変異箇所の探索の開始決定について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)モデル生物用いた機能解析 *生体モデルを用いた解析法:新しい方法を取り入れ効率よく変異モデルを作成できた。結果においては予想以上であり、次年度早々に生体解析を始められ研究推進への迅速化に期待される。また、Tbx5遺伝子とGm5563が協調的に作用していると予測される結果を得たことから、次年度はGm5563と相互作用する因子、およびTbx5と協調して制御する下流標的因子の同定に専念する。 *非コードRNA発現様式の追跡:Gm5563およびGm17382の発現様式を確認できたことにより、作用領域および機能の予測が容易となった。発生過程においてGm17382は流出路・左室において恒常的に発現していることから、第二心臓予定域由来のNkx2-5系譜細胞分化の制御に関与していると考えられる。 (2)ヒト心疾患重症化の起因因子 Tbx5遺伝子との相乗的な表現型が得られたことにより、ヒトTBX5遺伝子座近傍に存在する非コードRNA(TBX5-AS1:2)の機能を追跡することを議論した。TBX5-AS1:2の発現が抑制されたファロー四徴症患者において、重症化することが最近報告された。ヒトTBX5遺伝子座近傍にはもう一つ非コードRNA (TBX5-AS1:1)が存在し、両者についてヒトHolt-Oram症候群患者との関連を調べることを結論つけた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)モデル生物用いた機能解析:相互作用の理解のため、Tbx5:Gm5563およびNkx2-5:Gm17382二重遺伝子破壊モデルの表現型を解剖学・分子生物学的に明らかにする。lncRNAの生後機能の理解のため、Gm5563およびGm17382の遺伝子破壊モデルは、出生後の生理機能においても明らかにする(東京医科歯科大学・共同研究者)。 (2)との関連によるが、年度内にヒトHOSおよびNKX2-5患者において変異が見出されなかった場合、機能性エンハンサーとしての作用に焦点を当てた学術論文を作成する。他の非コードRNAについては、本年度は心臓分化過程での発現様式のみ明らかにする予定である。 (2) ヒト心疾患重症化の起因因子:コーディング領域に変異が確認できなかったヒト HOS患者およびNKX2-5患者において、TBX5-AS1:1、AS1:2、およびNKX2-5lncRNAのゲノムシーケンスを開始する。全て北米共同研究所内で行うか、DNAサンプル化後に代表研究者所属所内で行うか、議論する(グラッドストーン研究所/ハーバード大学・共同研究者)。また、ヒトiPS細胞由来心筋分化過程の細胞を用いて発生過程における発現様式を追跡する。 (3)RIP解析:ビオチンタグを付加させたGm5563およびGm17382を構築し、相互作用する複合体を捜索する(大阪大学・共同研究者)。エレクトロポレーション法を用いて直接生体内に導入し心臓を回収しサンプル収集を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新コロナの影響のため、3月に納品予定だった品目全てキャンセルとな理、次年度2020年に使用予定である。
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