研究課題
T細胞はヘルパーT細胞や制御性T細胞など様々な機能を持つ細胞に分化することにより、感染防御だけでなく、がん、アレルギー、生活習慣病など多くの疾患に関わっている。T細胞がその機能を発揮するためには分化・成熟過程において細胞の運命が厳格に制御・維持されなければならない。これは様々な転写因子やエピジェネティック因子によって制御されているが、詳細は未だ明らかではない。 我々は以前、転写因子Bcl11bがT細胞分化のマスターレギュレーターであることを報告した(Ikawa et al. Science, 2010)。さらに最近、Bcl11bのエンハンサー領域から転写される非コードRNA(ThymoD)を発見し、これがT細胞の運命制御に重要であることを示した(Isoda et al. Cell, 2017)。興味深いことに、ThymoD欠損マウスでは、Bcl11b欠損マウスと同様、T細胞分化が未分化な段階で停止し、白血病を発症する。そこで本研究では、このBcl11b/ThymoDによるT細胞のアイデンティティーの確立および白血病抑制機構を解明することを目的とする。本年度はBcl11b欠損マウスから人工白血球幹(iLS)細胞を作成した。Bcl11b欠損マウス骨髄から造血幹・前駆細胞を採取し、レトロウイルスを用いてId3を導入した。Id3を導入した細胞をセルソーターを用いてソーティングし、B細胞分化誘導条件で培養したところ、1ヶ月ほどで均一な細胞群が得られた。このBcl11b欠損iLS細胞は正常なiLS細胞と同様に増殖した。次にiLS細胞をT細胞へ分化誘導したところ、DN2での停滞が認められた。従って、ThymoD欠損iLS細胞を用いてThymoD欠損マウスの表現系を再現できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、ThymoD欠損マウスからiLS細胞を作成し、機能解析を行っている。
研究は今のところほぼ実験計画通りに進んでいる。
予定していた技術員の採用に時間を要したため。採用が決まり次第、翌年度分と合わせて使用する。
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PNAS
巻: 116 ページ: 24242-24251
10.1073/pnas.1907883116
臨床免疫・アレルギー科
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