研究課題/領域番号 |
19KK0223
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新井川 弘道 東北大学, 大学病院, 講師 (80636027)
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研究分担者 |
迫田 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40588670)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90323104)
渡辺 有為 東北大学, 大学病院, 助教 (20724199) [辞退]
田中 遼太 東北大学, 大学病院, 特任助手 (40647450)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 体外肺灌流 / 肺移植 / 心臓死ドナー |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、現在日本では肺移植に用いられていない心停止後ドナー肺に焦点を当て、新たに心臓死ドナーの胸腔・肺冷却法を開発し、体外肺灌流装置(EVLP)を利用して、ドナー肺の数を飛躍的に増加させることである。心臓死ドナー肺を用いた肺移植は日本では実施されておらず、このため全米有数の成熟した肺移植プログラムを有し、かつEVLPの十分な経験と実績をもつ米国クリーブランドクリニックと国際共同研究を実施する。 研究分担者の所属する産業技術総合研究所(産総研)内で、本研究のための新規EVLPが開発され、2~3時間の安定した体外肺灌流が可能となっている。開発型研究(ブタ心臓死モデルを用いた胸腔・肺冷却プロトコルの確立)では、既存の冷却保存液を心臓死ドナーの胸腔にて持続循環法させる方法(胸腔ドレーンを複数胸腔内に留置し、冷却された大量の肺保存液を循環させるもの)に変わるような、より低侵襲かつ冷却効果が得やすい新規方法を東北大学および産総研において開発・確立する。研究開始当初は、冷却気体を気道内から投入して胸腔・肺の冷却をはかる予定であったが、現在は、より効率的かつ臨床に即した形態での新規装置の開発とプロトコル確立のための実験が行なわれている。新型コロナ感染対策に伴い研究代表者と研究分担者・協力者の移動制限、さらに実験制限のため計画に遅延が生じている。しかしながら、令和4年度内に大動物実験にて新規冷却装置を用いた最適な胸腔冷却プロトコルが確立されれば、心臓死ドナー肺の維持された肺機能をEVLPにて実証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度に開発型研究(ブタ心臓死モデルを用いた胸腔・肺冷却プロトコルの開発)が継続して実施された。実験開始時点で予定されていた既存の人 工呼吸器に冷気発生装置を組み合わせて気道から胸腔を冷却する方法は、令和2年度内に実施された予備実験により、冷却効率の問題から目的を達成しうる十分な効果は得られないと結論づけられた。このため、令和3年度からは冷却方法を変更し「冷温槽」を用いてブタ心臓死ドナー全体を冷却する方法が試みられた。槽内に投入される液体の内容、水流の発生、ブタの体位の調整をはかり、目的の時間内に目的とする胸腔内温度10度以下を達成可能なプロトコルを検討中である。これらを評価した上で、十分な効果が得られるプロトコルのもと、非冷却群をコントロー ル群とみなしたうえで、冷却群とコントロール群の肺を共に体外肺灌流装置(EVLP)を用いて評価し、その差を明らかにする予定である。 一方で調査型研究(ブタ心臓死モデルを用いたEVLP血栓除去・溶解プロトコルの確立)は、心停止前にヘパリン投与を行わないブタ心臓死モデルを臨床の非コントロール心臓死(uDCD)ドナーの状況を反映するものとして使用し、EVLPを用いて適切な血栓除去プロトコルを確立する予定であった。しかしながら、前述の開発型研究において、摘出肺からほとんど血栓が確認されないことから、適切な臨床での対応により血栓に起因する多くの問題が改善できる可能性があると考えられた。本実験は令和3年度内に開始される予定であったが、COVID-19感染対策による研究分担者の移動制限、東北大学および同加齢医学研究所における実験実施制限 のために実施が見送られていた。実験実施に制限がある状況下で、これら調査型研究の優先度は低いものと判断せざるを得ず、開発型研究を優先的に実施しているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19感染対策による研究分担者の移動制限、東北大学および同加齢医学研究所における実験実施制限がない場合、令和4年度内に開発型研究(ブタ心臓死モデルを用いた胸腔・肺冷却プロトコルの確立)を優先的に継続して実施することを予定している。産総研で開発された冷温槽と対流発生装置にてブタ心臓死モデルを用いた実験を継続し、令和4年度中頃まで最適な冷却プロトコルの確立を目指している。プロトコルの確立後、令和4年末までに冷却群とコントロール群の肺を共に体外肺灌流装置(EVLP)を用いて評価し、その差を明らかにする予定である。 今後の状況次第であるが、概ね実施計画書通りに実験は遂行できるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発型研究(ブタ心臓死モデルを用いた胸腔・肺冷却プロトコルの確立)のための冷温槽、水流発生装置などの開発、また体外肺灌流装置の開発のため助成金が使用された。しかしながらCOVID-19感染対策による研究分担者の移動制限、東北大学および同加齢医学研究所における実験実施制限により予定されていた大動物を用いた実験には遅延が生じている。このため、東北大学内での支出が予定よりも少なかったものである。今後感染対策に対する制限に従いつつも可能な限り計画書通り令和4年度内にブタを用いた実験を予定している。灌流装置、灌流液、薬剤などの消耗品、実験用ブタが購入される予定であるため、当該年度に使用できなかった助成金はそのまま、翌年度支出として全額必要となる見込みである。
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