研究課題
2019年度は、当初の予定通り海外共同研究機関であるKarolinska Institutet, Swedenにて本研究の関係者が集まり(日本側参加者:笠井、田中(宏)助教、スウェーデン側参加者:Druid教授、Alkass博士、Bogdanovic教授)で打ち合わせを行った。Tachykinin receptor 1 (TACR1/NK1R)、Somatostatin (SST)、Choline acetyltransferase (CHAT)の免疫染色より、本研究で注目している脳領域であり、麻薬性鎮痛薬の呼吸抑制に関わると予想される延髄のPre-Botzinger Complex領域(preBotC)を特定できる先行論文が報告されているが、pilot研究により、今回解析を行う検体群では再現できないことを研究代表者らは明らかにしており(VINNOVA Marie-Curie Incomming Project, Project Leader: S Kasai)、preBotC領域の抽出方法について相談した。現在、解析を行う4群(第1群:慢性使用-過剰使用死、第2群:慢性使用-アクシデント死、第3群:非使用-過剰使用死、第4群:対照)のうち、第1, 3群については既に約20検体が回収・保管されており、さらに追加の検体回収が行われている。第2, 4群についても、検体回収の依頼を行った。
2: おおむね順調に進展している
2019年の当初の予定通り、日本側・海外共同研究先関係者の大半が集まり、今後の予定など打ち合わせや相談を行った。
海外共同研究機関のDruid教授、Alkass博士、Bogdanovic教授と、preBotC領域の特定法について相談し、アトラスや各種免疫染色などによる目的脳領域の精密抽出法を確立する。海外共同研究機関に既に保管済みの、麻薬性鎮痛薬の使用によるヒト死後脳約20検体を研究代表者の所属先に送付し、確立した方法による脳領域抽出を行う。preBotC領域の近接領域を用いてBioanalyzerによりRINを測定し、各検体におけるRNA品質を解析する。目的脳領域のRNAはmicroarrayを用いた全ゲノム遺伝子発現解析を行う。また、海外共同研究機関において、麻薬性鎮痛薬の使用による死後脳の他の脳領域を回収するための申請手続きを進める。現在、全世界中におけるコロナウィルスの感染拡大で海外共同研究機関での研究実施が難しい状況である。2020年度末までこの状況が継続する場合、以下の予定で進める。本研究計画では、麻薬性鎮痛薬が引き起こす呼吸抑制など副作用発現における分子メカニズムを、ヒト死後脳とマウスを用いて解析する計画であり、マウスの実験の大半は研究代表者の所属先において行う予定である。マウスにモルヒネやフェンタニルなど各種麻薬性鎮痛薬を投与した副作用発現モデルを作成する。さらに、来年度以降に行うエピゲノム解析のための各種脳細胞(神経細胞や各種グリア細胞など)別の細胞/細胞核分離手法を確立する。
海外共同研究機関との打ち合わせ費用(笠井分)は打ち合わせのための渡欧日程が2020年2月29日~3月7日であったため、2019年度内処理が間に合わず、2020年度に処理を行う予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 16件、 招待講演 7件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 526 ページ: 239-245
10.1016/j.bbrc.2020.03.073.
Mol Brain
巻: 12 ページ: 3
10.1186/s13041-018-0423-2.
Transl Psychiatry
巻: 9 ページ: 85
10.1038/s41398-019-0427-4.
Anesth Analg
巻: 128 ページ: 563-568
10.1213/ANE.0000000000003363.
Neuropsychopharmacol Rep
巻: 39 ページ: 90-99
10.1002/npr2.12050.
Int J Neuropsychopharmacol
巻: 22 ページ: 449-452
10.1093/ijnp/pyz025.
Ann NY Acad Sci
巻: 1451 ページ: 29-41
10.1111/nyas.13605.