研究課題/領域番号 |
19KK0225
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
笠井 慎也 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20399471)
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研究分担者 |
池田 和隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 分野長 (60281656)
村上 浩子 (古田島浩子) 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主任研究員 (60619592)
田中 美歩 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (40788155)
田中 宏樹 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70596155)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | オピオイド / 鎮痛薬 / 死後脳 / エピゲノム / 副作用 |
研究実績の概要 |
海外共同研究機関のDruid教授とZoomによる打ち合わせを行い、解析群の中で特に追加回収が必要なGroup 2 (慢性使用群:オピオイド慢性使用-アクシデント死)およびGroup 4 (対照:オピオイド非使用-アクシデント死)の死後脳について回収を進めた。 本研究計画では、麻薬性鎮痛薬が引き起こす呼吸抑制など副作用発現における分子メカニズムを、ヒト死後脳とマウスを用いて解析する計画であり、マウスの実験の大半は研究代表者の所属先において行う予定である。 マウスに各種麻薬性鎮痛薬であるブプレノルフィンを投与した副作用発現モデルの作製を行った。覚醒下においてマウスの呼吸量を測定することは、高額な機器が必要で正確な解析が難しい。現在、世界中で問題となっているヒトにおける麻薬性鎮痛薬の過剰投与による突然死は、その呼吸抑制作用によると考えられており、麻薬性鎮痛薬の中でもフェンタニル・オキシコドン・ブプレノルフィンが主な原因薬物である。麻薬性鎮痛薬の投与により突然死を引き起こすことをアウトカムとして、ブプレノルフィンを投与できる最大濃度を計測した。C57BL/6J系統のマウスを用いたが、鎮痛効果など麻薬性鎮痛薬の作用にはヒトの個人差と同様にマウスの系統間差があることが報告されている。今後は、フェンタニルおよびオキシコドンについてC57BL/6Jの他のマウス系統においても同様の解析を行い、麻薬性鎮痛薬の過剰投与による突然死のマウスモデルを確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に予想された通り、新型コロナウィルスのデルタ株およびオミクロン株の世界的流行のため、本年度も海外共同研究機関に滞在し実験を行うことが困難であった。そのため、海外共同研究機関で行う予定の実験は休止している。しかし、海外共同研究者とZoomによる今後の打ち合わせを行い、解析群の中で特に追加回収が必要なGroup 2 (慢性使用群:オピオイド慢性使用-アクシデント死)およびGroup 4 (対照:オピオイド非使用-アクシデント死)の死後脳について、海外共同研究者に回収を依頼した。法医学(検死)検体が新型コロナウィルスに感染してる危険性のため、数検体のみの回収が終了している。既に保管済みの死後脳検体の日本への輸送については、ヒト組織検体の国家間輸送が難しく現地において核酸等の抽出を行い、抽出後検体の送付を計画していたことから、本年度は日本への検体送付は行わなかった。研究代表者の所属機関で実施する計画であった、麻薬性鎮痛薬を投与した副作用発現マウスモデルの作製については大部分を行う事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度末くらいから、共同研究機関の所在国スウェーデンと日本間で条件なく出入国が可能になり、海外共同研究機関における共同研究を実施できることが予想される。 次年度は海外共同研究機関においては、引き続き麻薬性鎮痛薬の使用による死後脳の回収を進める。さらに現時点で、オピオイドの呼吸抑制に関わると考えている延髄呼吸中枢におけるPreBotC領域について、ヒト死後脳における正確な領域特定が問題となっており、海外共同研究機関のヒト脳の解剖学の研究者と相談し、この問題点を解決する。 研究代表者の所属機関においては、引き続き麻薬性鎮痛薬の過剰使用モデルマウスの作製、および延髄の呼吸中枢(PreBotC領域など)におけるトランスクリプトーム解析及びエピゲノム解析を行う。また、2023年以降は、引き続き麻薬性鎮痛薬の過剰使用マウスモデルにおいて、延髄の呼吸中枢や脊髄などにおいてトランスクリプトーム解析及びエピゲノム解析を行う。同様の解析を回収したヒト死後脳においても行い、ヒトとマウスのトランスクリプトーム解析及びエピゲノム解析データを比較することで、本研究の目的である「ヒトに固有の遺伝子制御機構の解明」を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスのデルタ株およびオミクロン株の世界的流行のため、本年度も海外共同研究機関に滞在し実験を行うことが困難であった。そのため、海外共同研究機関に滞在し行う予定の実験に係る費用分の未使用額が生じた。次年度末くらいから、共同研究機関の所在国スウェーデンと日本間で条件なく出入国が可能になり、海外共同研究機関における共同研究を実施できることが予想されるため、海外共同研究機関における滞在費などに使用する。
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