研究課題/領域番号 |
19KK0234
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (20350829)
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研究分担者 |
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
荒井 敦 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (00532772) [辞退]
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70733509)
岩本 莉奈 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 助教 (20907216)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 高感度レポーターシステム / プロテオゲノミクス / Wnt / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
どのWntシグナル分子が骨形成に重要か不明な点が多い。2022年度は、2021年度までに本研究において質量分析リン酸化プロテオーム解析によりWntシグナル依存的にTGFbetaファミリーサイトカインのリン酸化が有意に亢進していたことを見出していたので、この分子の解析に注力した。具体的には、公開疾患情報により、このTGFbetaファミリー分子とWntシグナルが慢性腎臓病(CKD)に伴うミネラル骨代謝異常(MBD)の増悪に関与していることが、判明していたため、2021年度までにリン酸化プロテオミクスで同定したTGFbシグナルの挙動、Wnt阻害因子の発現変化について解析した。そして、骨髄間葉系細胞の骨芽細胞分化および脂肪細胞分化過程の双方において、TGFbeta ファミリーのシグナルが大きく変動していることがわかった。CKD-MBDモデルにおいて、このTGFbetaファミリー分子とWnt阻害因子のmRNA発現が骨において低下しているにもかかわらず、それらの血中濃度が著しく上昇していることを見出した。CKD-MBDでは、骨形成が低下するものの反対に軟組織の石灰化が亢進する。このTGFbetaファミリー分子とWnt阻害因子は、軟組織の石灰化に寄与することも想定されたので、そのための実験も行った。さらには、WntレポーターマウスであるAxin2-tomatoマウスを用いた骨折治癒モデルにおいて、骨折過程において間葉系細胞でWntシグナルの活性化を検出し、Wntの下流でこのTGFbataファミリーの分子のmRNA発現が亢進していることを見出した。したがって、このTGFbataファミリーの高リン酸化は骨形成促進に寄与し、治癒促進に貢献している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでCovid-19の蔓延のため、共同研究先への長期滞在が困難であり、実験実施に必須となるvisaの手続きが出来ず、客員研究員としても身分を得ることが出来なかった。したがって昨年度までに、共同研究先の本課題の共同研究者が質量分析によるリン酸化プロテオーム解析で同定したWnt依存的なTGFbetaファミリー高リン酸化ペプチドの意義を見出すための傍証実験を日本国内で行ってきた。私が共同研究先において以前に構築したゲノムワイドCrisprスクリーニング系のNGS解析は中断したままである。つまり肝心のゲノミクス解析の方は中断している。国内で行ったリン酸化プロテオーム解析の傍証実験において、骨折治癒の骨形成の過程で、このTGFbetaファミリー分子の高リン酸化がWntシグナルの下流で重要な働きを持つ可能性を見出すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、Visaの取得を行い海外共同研究先において、構築したスクリーニング系で生き残った細胞のNGS解析をすすめる。最近になって、Wnt3a以外の骨形成促進に関わるWntリガンドと分泌性Wnt antagonistの相互作用が構造化学的に明らかになってきた。我々は、成長期および大人の骨の恒常性には、Wnt3a以外のWntリガンドが重要であることを示唆するデータを得た。今年度は、Wnt3a以外のWntリガンドを骨形成促進因子として用い、すでに代表者が確立したCrispr-Cas9によるゲノムワイドWntシグナルスクリーニング系を用いて、Wnt3aの時と同様のスクリーニングを行い、成長期および大人の骨形成に重要な因子を同定する予定である。また、今回同定されたWntシグナル依存的なTGFbetaファミリー分子のリン酸化の意義を、リン酸化部位変異タンパクをST2細胞などの未分化間葉系細胞に過剰発現させることで解明する予定である。また、WntとこのTGFbetaファミリー分子の関係がカルシウム代謝におけるCKD-MBDの病態制御シグナルとして関与しているか検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の世界的蔓延のため、共同研究先大学の客員研究員受け入れ方針、Visa発行のポリシーや米国国境コントロールの方針変更がたびたびあった。そのた め、共同研究先に渡航し実験を行う機会を逸してしまったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、共同研究先のセントルイス・ワシントン大学医学部のMajor研究室に滞在し、Major研究室における研究実施のための物品費および旅費に使用する予定である。
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