• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

高感度レポーターシステムとプロテオゲノミクスによる代謝性骨疾患治療標的分子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 19KK0234
研究機関松本歯科大学

研究代表者

中道 裕子  松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (20350829)

研究分担者 宇田川 信之  松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
荒井 敦  松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (00532772) [辞退]
堀部 寛治  松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70733509)
岩本 莉奈  松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 助教 (20907216)
研究期間 (年度) 2019-10-07 – 2025-03-31
キーワード高感度レポーターシステム / プロテオゲノミクス / Wnt / 骨芽細胞
研究実績の概要

どのWntシグナル分子が骨形成に重要か不明な点が多い。2022年度は、質量分析リン酸化プロテオーム解析によりWntシグナル依存的にTGFbetaファミリーサイトカインのリン酸化が有意に亢進していたことを見出した。以降、この分子の解析に注力した。このTGFbataファミリーの高リン酸化は骨形成促進に寄与し、治癒促進に貢献している可能性があることを示した。2023年度は、このTGFbetaサイトカインが、骨形成低下を伴う病態でどのような挙動を示すか解析した。重度の骨形成低下を伴う病態モデルとして、i)高ビタミンD症とii)慢性腎臓病モデルマウスの解析を行った。慢性腎臓病モデルは、アデニン給餌による方法を用いた。種々の血清パラメーターを調べ、慢性腎臓病がこのアデニン給餌マウスにおいて誘導されていることを確認し、さらに腎性骨異栄養症を発症していることを組織学的解析と骨のマイクロCT解析により確認した。さらに、両モデルマウスにおいて骨形成促進因子であるWntの阻害因子スクレロスチンが血中で高レベルであることを発見し、このTGFbetaサイトカインのレベルが低下していることがわかった。高ビタミンD症と慢性腎臓病による骨形成低下と軟組織石灰化には、Wntシグナル抑制因子Sclerostin、リン利尿ホルモンFGF23と糖転移酵素の関与を示唆するデータを得た。以上、2023年度は、この二つの重度骨形成低下病態モデルを研究することで、TGFbetaシグナル分子に加え、骨芽細胞のビタミンD受容体とWntシグナル下流で作動する骨再生に関与する3因子を見出すことが出来た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度から2022年度はCovid-19の蔓延のため、共同研究先への長期滞在が困難であり、実験実施に必須となるvisaの手続きが出来ず、客員研究員としても身分を得ることが出来なかった。2023年度は新しく入室した大学院生の実験指導のため、共同研究先滞在のチャンスが無かった。したがって2022年度に引き続き2023年度は、本課題の海外共同研究者と代表者の共同研究において、リン酸化プロテオーム質量分析で同定したTGFbetaファミリー高リン酸化ペプチドの意義を見出すための傍証実験を日本国内で行ってきた。そのため、代表者が共同研究先において以前に構築したゲノムワイドCrisprスクリーニング系の次世代シークエンス(NGS)解析は中断したままである。つまり肝心のゲノミクス解析の方は中断している。国内で行ったリン酸化プロテオーム解析の傍証実験において、骨折治癒における骨形成の過程で、このTGFbetaファミリー分子の高リン酸化がWntシグナルの下流で重要な働きを持つ可能性を見出すことが出来た。さらに、重度の骨形成低下を伴う疾患である高ビタミンD症と慢性腎臓病モデルマウスにおいてTGFbetaファミリーシグナルの低下を示す新しい結果を得ることが出来た。

今後の研究の推進方策

2024年度は、Visaの取得を行い海外共同研究先において、代表者が構築したドロップアウトスクリーニング系で生き残った細胞のNGS解析をすすめる。国内外の他の研究グループによる研究において、種々のWntリガンドと分泌性Wnt antagonist の相互作用が構造化学的に明らかになってきた。そのような中我々は、SclerostinはWnt3aの活性を全く抑制出来ず、Wnt10bとWnt4の活性を強力に抑制することを見出した。さらに成長期および大人の骨の恒常性、および骨折治癒には、Wnt10b, Wnt4が重要であることを示唆するデータを得た。今年度は、Wnt10b, Wnt4を骨形成促進因子として用い、すでに代表者が確立したCrispr-Cas9によるゲノムワイドWntシグナルスクリーニング系を用いて、Wnt3aの時と同様のスクリーニングを行い、成長期および大人の骨形成、骨折治癒に必須の因子を同定する予定である。また、我々が同定したWntシグナル依存的なTGFbetaファミリー分子のリン酸化の意義を、リン酸化部位変異タンパクを様々な未分化間葉系細胞に過剰発現させることで解明する予定である。また、Wnt10b, Wnt4とこのTGFbetaファミリー分子の相互作用が、高ビタミンD症と慢性腎臓病ので認められる重度の骨形成低下と関与しているか検証する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2020~2022年度はCovid-19の世界的蔓延のため、共同研究先大学の客員研究員受け入れ方針、Visa発行のポリシーや米国国境コントロールの方針変更がたびたびあった。2023年度においては、新しく入室した大学院生の研究指導を直接行わなくてはならず、共同研究先のセントルイス・ワシントン大学に滞在するスケジュールが立てることが出来なかった。そのため、共同研究先に渡航し実験を行う機会を逸してしまい、次年度使用額が生じた。2024年度においては、共同研究先のセントルイス・ワシントン大学医学部のMajor研究室に滞在し、Major研究室における研究実施のための物品費および旅費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] セントルイス・ワシントン大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      セントルイス・ワシントン大学
  • [雑誌論文] Lack of vitamin D signalling in mesenchymal progenitors causes fatty infiltration in muscle2024

    • 著者名/発表者名
      Hosoyama Tohru、Kawai‐Takaishi Minako、Iida Hiroki、Yamamoto Yoko、Nakamichi Yuko、Watanabe Tsuyoshi、Takemura Marie、Kato Shigeaki、Uezumi Akiyoshi、Matsui Yasumoto
    • 雑誌名

      Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle

      巻: 印刷中 ページ: -

    • DOI

      10.1002/jcsm.13448

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Osteoclastogenesis and vitamin D2024

    • 著者名/発表者名
      Nakamichi Yuko、Takahashi Naoyuki、Suda Tatsuo、Udagawa Nobuyuki
    • 雑誌名

      Feldman and Pike's Vitamin D 5th Edition

      巻: 1 ページ: 395~408

    • DOI

      10.1016/B978-0-323-91386-7.00021-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The vitamin D receptor in osteoblastic cells but not secreted parathyroid hormone is crucial for soft tissue calcification induced by the proresorptive activity of 1,25(OH)2D32023

    • 著者名/発表者名
      Nakamichi Yuko、Liu Ziyang、Mori Tomoki、He Zhifeng、Yasuda Hisataka、Takahashi Naoyuki、Udagawa Nobuyuki
    • 雑誌名

      The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology

      巻: 232 ページ: 106351~106351

    • DOI

      10.1016/j.jsbmb.2023.106351

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The vitamin D receptor in osteoblastic cells dictates disease outcomes of calcium and phosphate metabolism disorders2024

    • 著者名/発表者名
      劉子洋, 何治鋒, 保田尚孝, 宇田川信之, 中道裕子
    • 学会等名
      第8回日本骨免疫学会ウインタースクール
  • [学会発表] 活性型ビタミンDの骨吸収促進作用による軟組織の石灰化に、副甲状腺ホルモンは関与せず、骨芽細胞内のビタミンD受容体が決定的な役割 を果たす2023

    • 著者名/発表者名
      中道裕子, 劉子洋, 何治鋒, 保田尚孝, 高橋直之, 宇田川信之
    • 学会等名
      第41回日本骨代謝学会学術集会
  • [学会発表] The Vitamin D Receptor (VDR) in Osteoblastic Cells but Not Parathyroid Hormone (PTH) Secretion Is Critical for Soft Tissue Calcification Induced by the Proresorptive Activity of 1,25(OH)2D32023

    • 著者名/発表者名
      Yuko Nakamichi, Ziyang Liu, Tomoki Mori, Zhifeng He, Hisataka Yasuda, Naoyuki Takahashi, Nobuyuki Udagawa
    • 学会等名
      ASBMR (アメリカ骨代謝学会)2023 Annual Meeting

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi