研究課題/領域番号 |
19KK0237
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田嶋 敦 金沢大学, 医学系, 教授 (10396864)
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研究分担者 |
辻口 博聖 金沢大学, 医学系, 特任助教 (00723090)
細道 一善 金沢大学, 医学系, 准教授 (50420948)
觀音 隆幸 金沢大学, 医学系, 特任助教 (50525409)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病 / バングラデシュ / 発症リスク / 遺伝要因 / 環境要因 |
研究実績の概要 |
糖尿病は世界中に蔓延する多因子疾患である。糖尿病発症に関わる分子・環境基盤を包括的に理解し、科学的根拠に基づく適切な治療・予防法を開発するには、更なる国際共同研究の実施が必要とされている。本研究では、糖尿病急増地域の南アジア地域に着目し、バングラデシュ集団の糖尿病の遺伝的リスク、生活習慣・環境リスクならびに遺伝-環境相互作用リスクを明らかにし、そのリスクプロファイルの国際比較(特に、日本との比較)を通じて、糖尿病発症に関わる分子・環境基盤の理解の深化に貢献することを目的とする。 本年度は、日本、バングラデシュ両国共同で昨年度作成した研究計画に従い、バングラデシュ南東部のチッタゴン管区集団(チッタゴン医科大学病院、チッタゴン糖尿病病院などに通院中の患者など)における若年成人型糖尿病(MODY: maturity onset diabetes of the young)病型を呈する糖尿病患者とその家族を対象とする研究を開始・実施するために、バングラデシュにおいて研究倫理申請を行った。バングラデシュ医学研究評議会からの承認を得た後に、研究試料の収集ならびに生活環境・習慣に関する質問票調査研究を開始した。また、日本、バングラデシュ両国間の比較分析のために、日本人集団における若年成人型糖尿病MODY患者家系のエクソンシークエンシング解析を行い、新規原因変異を同定するとともに、原因変異の遺伝型-表現型相関についての新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バングラデシュとの共同研究体制の構築については当初計画以上に進展し、研究の実施に必要な機関承認を得ることはできたものの、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う当地での機関業務停止や外出制限措置などもあり、当地での国際共同研究の実施にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、バングラデシュ南東部のチッタゴン管区集団における若年成人型糖尿病MODY病型を呈する罹患者(未成年あるいは若年成人50名)より得たゲノムDNAを用いて、exome-seqにより全エキソンの配列解析を行い、新規MODY遺伝子あるいは既知MODY遺伝子における原因変異を同定する。新規MODY遺伝子を見いだし場合は、発端者家族からもゲノムDNAを入手し、原因変異の遺伝性ならびに遺伝型-表現型相関について分析する。原因変異の出現頻度に基づきバングラデシュ集団における主要なMODY遺伝子を特定するとともに、日本人集団データを含む他の集団データとの比較から、バングラデシュMODYの遺伝要因の特徴を明らかにする。加えて、生活環境・習慣に関する質問票調査研究も実施し、遺伝型-表現型連関に影響を及ぼす生活環境・習慣因子の同定も試みる。他方、2型糖尿病T2DMリスク要因の探索では、バングラデシュ医学研究評議会ならびにチッタゴン医科大学病院の倫理評議委員会においてバングラデシュにおける研究倫理承認を得た後に、遺伝要因ならびに遺伝-環境相互作用要因の探査研究に先立ち、生活環境・習慣に関する体系的な質問票調査研究を実施し、新規あるいは既知のT2DMリスク因子を同定する。他の集団データとの比較から、バングラデシュT2DMの生活環境・習慣リスク要因の特徴を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う当地での機関業務停止や外出制限措置などもあり、当地での国際共同研究の実施にやや遅れが生じているため、次年度使用が生じた。 この次年度使用額と、次年度請求する助成金を合わせて、バングラデシュ集団の糖尿病の遺伝的リスク、とりわけバングラデシュ若年成人型糖尿病MODYの遺伝要因ならびに遺伝型-表現型相関の解明ならびにリスクプロファイルの国際比較分析が可能となる。また、バングラデシュT2DMの生活環境・習慣リスク要因の特徴を解明するための国際共同研究に着手することができる。
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