研究課題/領域番号 |
19KK0241
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斉藤 繭子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20598031)
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研究分担者 |
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 教授 (10708001)
今村 剛朗 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60849412)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | ノロウイルス / マイクロバイオーム解析 / 下痢症ウイルス / 母子免疫 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続きペルー共和国の誕生コホート研究で収集された検体を用い、母乳中のノロウイルスGII.4型に特異的な免疫グロブリンG(IgG)の検出を行った。誕生コホート27名の母親から、児の出生時から6か月間に提供された母乳検体中のノロウイルスGII.4特異的IgGをELISA法を用いて定量し、生後6か月間に①ノロウイルス陽性の下痢症があった、②ノロウイルスが陽性であったものの下痢症を認めなかった(無症候性感染が疑われたもの)、③ノロウイルス感染が否定的であったもの(コントロール群)の3群間で比較した。ノロウイルス感染前1か月以内の検体と同時期のコントロール群では(n=27)、3群間に明らかな差が認められなかったが、生後~感染前(n=124)と感染後(n=91)で比較すると、ノロウイルス陽性下痢症に罹患した乳児の母親の母乳に占めるIgG量は3群間で最も低く(中央値0.023μg/mL)、感染後では3群のうちで唯一IgG量が上昇し(中央値:0.040μg/mL)、コントロール群(中央値:0.036μg/mL)と同等の中央値となっていた。ノロウイルス感染が母乳中のIgG量または臍帯由来のIgG量と相関する可能性、児の感染時に母親も感染し、母乳中のIgG量が増加した可能性が示唆された。さらに、下痢症病原体の診断パネルであるLuminex xTAG GPP RUO Gastrointestinal (GI) Pathogen PanelとFilmArray GI Panel (BioFire Diagnostics) を用い、国内で採取した下痢症便検体57検体中の病原体を調べたところ、ウイルス、細菌の検出結果に差がなかったことを確認した。 昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの流行により現地での調査ができなかったため、カエタノ大学の研究者とはオンラインでの情報交換と検体輸送を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年から流行した新型コロナウイルスのパンデミックが続き、2021年のデルタ株、2022年のオミクロン株の流行により、ペルーと日本両国間の移動が前年度に引き続き制限された。現地においてもフィールド調査に必要な人員、安全の確保ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ノロウイルス特異的IgG抗体を臨床検体で評価し、乳児のノロウイルス感染の有無や症状の有無との相関について解析する。加えて、母乳中の中和抗体等、母乳中の免疫学的因子の検索をさらに進める。新型コロナウイルスの流行状況を見極めつつ、現地での検体収集方法を見直し可能な範囲での調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、2021年度はペルーと日本両国間の移動が制限されていたこと、デルタ株やオミクロン株の新たな変異株の流行のため検体採取を行うフィールド調査員や現地実験室の安全が確保できなかった。ノロウイルス特異的IgG抗体を臨床検体で評価し、乳児のノロウイルス感染の有無や症状の有無との相関について解析していく予定である。加えて、母乳中の中和抗体等、母乳中の免疫学的因子の検索をさらに進める。新型コロナウイルスの流行状況を見極めつつ、現地での調査を行う。繰り越した残額については2022年度の現地調査の委託費、渡航費、実験補佐のための人件費と検体輸送費に使用する予定である。
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