研究課題/領域番号 |
19KK0241
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斉藤 繭子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20598031)
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研究分担者 |
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 教授 (10708001)
今村 剛朗 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60849412)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 下痢症 / ノロウイルス |
研究実績の概要 |
母乳中にはノロウイルスと結合することが実験的に報告されているオリゴ糖、それに類似した糖鎖構造を持つ組織血液型抗原が分泌されている。これらのうち、組織血液型抗原は唾液中や腸管、血球上に発現しているが、乳幼児のノロウイルス感染や重症化のリスク因子であることが報告されている。本研究では母乳中のノロウイルス特異的な抗体の評価を進めているが、ウイルスに結合する糖鎖の存在により抗体による感染防御は妨げられる可能性がある。2022年は組織血液型抗原の濃度の評価法として、先行研究で組織血液型抗原の評価に使用されているハリエニシダ由来のレクチンであるUEA(Ulex europaeus)-1を用いたH抗原の検出、ノロウイルスとより特異的に結合すると考えられているH1抗原(H抗原のタイプ1)の検出法の検討を行った。FUT2遺伝子の配列から推定される分泌型(組織型血液抗原が唾液中に発現している宿主)、弱分泌型の分類が既知の唾液検体(国内症例)を用い、ELISA法にて組織血液型抗原の濃度の分布を解析した。UEA-1を用いてH抗原を評価した場合はH1抗原に対するモノクローナル抗体を用いた試験より抗原の濃度が高く、H1抗原に加えて他のH抗原や組織血液抗原を反映している可能性が示唆された。尚、従来弱分泌型と評価された変異を持つ個体における組織血液抗原の濃度分布が想定していたよりも広範囲である可能性が示唆されたため、FUT2遺伝子変異とH抗原の発現量については更なる検討が必要と考えられた。 また、母乳、糞便、唾液に含まれるノロウイルスと細胞外小胞等検出を行う目的で米国、ペルーの研究協力者とオンライン会議を行いペルーにて採取された検体から乳児のノロウイルス感染前後で採取されたものを選択し米国へ輸送した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に引き続き新型コロナウイルス感染流行が継続し、2021年年末からの世界的なオミクロン株の流行への対応のため、対象国であるペルーへの渡航や現地調査の遂行を保留した。これに伴い本研究の2023年まで研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体の輸送と解析を進め、国内での母乳中のノロウイルス特異的抗体、細菌叢の解析を進める。オリゴ糖、組織血液型抗原のノロウイルス関連下痢症への寄与については、他の背景因子を含めた統計学的解析を進める。現地へ渡航し、解析結果の報告を行い、論文執筆と総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航は可能な状況とはなったが共同研究機関側の研究体制が整わず新たに相手国との調整が必要であった。今後は相手国へ渡航し検体収集に関する協議などを行う予定である。
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