研究課題/領域番号 |
19KK0243
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡本 成史 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (50311759)
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研究分担者 |
倉石 貴透 金沢大学, 薬学系, 准教授 (90613167)
大貝 和裕 金沢大学, AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター(保), 准教授 (40706983)
須釜 淳子 藤田医科大学, 保健衛生学部, 教授 (00203307)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 皮膚細菌叢 / カメルーン / HIV感染 / ディスバイオーシス |
研究実績の概要 |
カメルーン人ならびに日本人の皮膚細菌叢の違いについて、比較検討を継続して行い、以下を明らかにした。 カメルーン人の皮膚ミクロバイオ―ムは、この研究で調べたすべての皮膚部位で日本人の皮膚ミクロバイオームと明らかに異なるものであった。たとえば、Micrococcus属細菌がカメルーン人の皮膚サンプルに多く見られたが、日本の皮膚サンプルにはほとんど見られなかった。一方、Cutibacterium属は日本人で有意に高かった。ベータ多様性分析は、カメルーン人の皮膚微生物叢が日本人とは異なるクラスターを形成することを示し、両国の参加者間の微生物叢プロファイルに実質的な違いがあることを示唆した。さらに、皮膚微生物のアルファ多様性は、日本人の参加者よりもカメルーン人の方が高かった。以上の結果は、人間の皮膚に多様な微生物叢が存在することを示唆しするとともに、皮膚の健康維持ならびに各種皮膚疾患や皮膚感染症の発症機序に民族間での違いを有する可能性を示すものと考えている。 この違いが、腸内細菌叢などにもみられるか行う予定だったが、新型コロナ感染症の世界的流行による海外渡航制限などが長引き、期間内に検討することが不可能と判断し、断念した。そのため、今後は、皮膚細菌叢のみに焦点を絞り、HIV感染の有無による皮膚細菌叢構成の変化とカメルーン、日本での相違、さらには、HIV感染の進行度合いに対する皮膚細菌叢の変化と皮膚疾患発症への影響について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カメルーン人における皮膚細菌叢の特徴と日本人におけるそれとの違いを明らかにした。この結果を基に、HIV感染によるカメルーン人特異的な皮膚細菌叢の変化を比較検討することが出来、これらの細菌叢構成がHIV感染によってどのような変化が発生し、その結果、そのような皮膚感染症や皮膚疾患が現れるのか比較検討することが可能となった。腸内細菌叢の解析や検体数の増加を行うことが新型コロナ感染拡大により不可能となってしまったが、この研究で調べるべき最低限の研究を行うことができるため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚粘膜感染症を発症しているHIV感染者で分布割合が増加ないし減少している常在微生物に着目して,同微生物の皮膚粘膜感染症の原因病原体の病原性の変化ならびに発症への関与の是非について検討する.例えば,常在微生物と原因病原体を試験管内で懸濁する,もしくは原因病原体のみ試験管内に入れ,一定時間培養し,その後原因病原体数(コロニー数もしくはプラーク数)を比較する.また,皮膚粘膜上皮での原因病原体の増殖促進・抑制効果を明らかにするために,非感染ないし常在微生物感染のヒトの皮膚もしくは粘膜上皮細胞株に発光色素で標識した原因病原体を添加させて一定時間培養し,培養後の上皮細胞の変性状態を組織染色法等で観察すると共に,上皮細胞に付着・侵入した原因病原体量を発光測定プレートリーダー等により比較検討する.以上の結果ならびにその他実験による解析結果などを統括し, HIV感染者における免疫応答と皮膚粘膜における常在微生物叢の変化と病原体感染,活性化に対する皮膚粘膜バリア機能の変化との関連を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者である須釜淳子教授の助成金について予定された購入見積金額より若干安価で購入した案件が発生し、次年度使用額が2,554円発生した。この金額については、次年度の須釜教授分の物品経費に上乗せする形で使用する予定である。
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