研究課題/領域番号 |
19KK0249
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 綾香 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (80508333)
|
研究分担者 |
菅波 孝祥 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50343752)
原 雄一郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医学研究センター, 主席研究員 (70709708)
|
研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
|
キーワード | 慢性炎症性疾患 / リピドーム解析 / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
近年、肥満や動脈硬化、自己免疫疾患など種々の慢性疾患に共通の基盤病態として「慢性炎症」が注目されているが、その分子機構は未だ十分に理解されておらず;、特に免疫細胞内の栄養代謝異常の関与は明らかにされていない。研究代表者はこれまでに、抗原提示細胞内の脂質蓄積が炎症、ひいては全身の自己免疫疾患 を惹起することを明らかにし、病態の進展過程における免疫細胞内のダイナミックな脂質の質的・量的変化「脂質リプログラミング」の可能性を示唆した。一方、肥満や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など、過栄養により生じる全身性の慢性炎症に単球・マクロファージ系細胞が関与することが報告されているが、全身の栄養代謝状態と免疫細胞内の栄養代謝状態の関係は全く分かっていない。 本研究では、慢性炎症性疾患の発症・進展に伴う免疫細胞内脂質の量的・質的変化とそのメカニズムを明らかにする。また、代表的な慢性炎症性疾患として、自己免疫疾患と、全身性の脂質代謝異常を有する肥満を比較解析することにより、疾患特異的な、あるいは慢性炎症性疾患に共通の脂質リプログラミングの分子機構を解明し、治療標的としての可能性を検証する。本研究に不可欠な(1)脂質の網羅的解析、(2)免疫細胞のシングルセルトランスクリプトーム解析、(3)細胞内脂質代謝遺伝子の病態における意義の解明の一部は、核内受容体による脂質代謝制御研究の第一人者であるPeter Tontonoz博士(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)との共同研究により遂行する(図1)。本研究の成果により、細胞内脂質代謝という従来にない切り口で疾患特異的な慢性炎症化のメカニズムが明らかになるのみならず、慢性炎症性疾患の新しい診断・予防・治療の提案につながると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該期間内には、自己免疫疾患の免疫細胞における解析として、自己免疫疾患モデルマウスより免疫細胞を単離し、シングルセルRNA-seqおよびリピドーム解析を予定していた。モデルマウスの作製および基本的な病態の解析はできたものの、COVID-19の影響により渡米できないため、国内施設でオミクス解析のための基礎検討とサンプル採取を終えたところであり、全体的にやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに採取できた、自己免疫疾患モデルマウスの脾臓免疫細胞を用いて、シングルセルRNA-seqとリピドーム解析を組み合わせることにより、自己免疫疾患の細胞特異的な脂質の変化とそのメカニズムを解明する。また、免疫細胞内の脂質代謝関連候補因子の欠損マウスを用いて、自己免疫疾患や肥満を誘導し、病態の発症・進展への影響を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会への参加と海外共同研究先への打ち合わせ及び実験のための渡米ができず、一部の実験に遅れが生じたため。直接訪問の代わりにWeb会議を頻繁に行なっており、共同研究先での研究は国内でできるように進めている。次年度、国内で行う実験に使用し、渡米できるタイ ミングで共同研究先への訪問と実験を行いたいと考えており、当該年度からの繰越分で補填する必要があるため、当該助成金を使い切る予定である。
|