研究課題/領域番号 |
19KK0266
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤本 成明 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (40243612)
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研究分担者 |
ムサジャノワ ジャンナ 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (30770432)
佐藤 斉 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90285057)
星 正治 広島大学, 平和センター, 名誉教授 (50099090)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 放射性微粒子被曝影響 / 放射性マンガン / 内部被曝 |
研究実績の概要 |
放射線被曝影響評価では、放射性微粒子による内部被曝影響は外部被曝と同じとされている。しかし、原爆被曝者の疫学データやカザフスタン核実験場周辺の健康調査は、残留放射性物質の内部被曝の健康リスクが大きいことを示している。よって、ヒト被曝影響の正確な評価と被曝防護のためには、その影響を確定する必要がある。本研究は、原爆爆発時に土埃で多量に生成した放射性二酸化マンガン(56MnO2)をモデルとし、放射性微粒子の曝露影響を動物試験によって明らかにすることを目的とする。曝露試験が可能な施設を持つカザフスタンとの国際共同研究により実施する。 2022年度は、カザフスタンではCOVID-19のパンデミックは終結したが、日本政府はカザフスタンの感染危険レベルを2として維持し、日本人も含めた日本への入国制限も継続したため人的研究交流が難しい状況が続いた。しかし本研究課題のマウスを用いた56Mn曝露試験について最初の解析を完了した。 カザフスタン国立核研究センターの原子炉の中性子線によりMnO2微粒子を放射化し、雄C57BLマウスへ曝露した。主要臓器の放射活性を基に、臓器ごとの吸収線量を推計した。曝露後3日、14日、70日後の肺および精巣への生物学的影響について検索した。1) 臓器別の吸収線量の分布は、これまでのラットと同様に消化管で高く、続いて肺・皮膚の順であった。2) 肺での56Mn曝露線量は250mGy以下であったが、病理生理指標であるアクアポリン1発現が上昇しており影響が示された。2Gyの外部被曝ではこの変化は見られず、MnO2微粒子内部被曝のより高い生物影響が示唆された。3) 精巣への影響は、病理学的/遺伝子発現解析では見いだされなかった。Wistarラットでは、56Mn曝露のステロイドホルモン産生酵素への影響が顕著であったが、C57BLは「耐性」であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックの影響で、予定していたマウスへの放射性マンガン微粒子曝露実験の解析が遅れているため。しかし第一回目の曝露試験については、解析が完了し成果を得て発表した。
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今後の研究の推進方策 |
マウスをモデルとした56MnO2微粒子内部被曝による生物影響解析をさらに進めるため、「放射線高感受性」の系統であるBalb/cマウスへの曝露実験により、C57BLとの比較解析を行う。これまでと同様に、臓器毎の線量推定、組織での放射線応答性遺伝子発現解析を行い、56MnO2微粒子内部被曝影響およびマウス系統差を解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19パンデミックによる実験実施の遅延のため。研究期間を延長し2023年度に追加の曝露試験を行う。曝露実験のための施設使用料、解析費用、および旅費に使用する。
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