研究課題/領域番号 |
19KK0273
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山室 真澄 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80344208)
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研究分担者 |
管原 庄吾 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 講師 (30721302)
小室 隆 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 専任研究員 (40782561)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 湖岸水温 / 全リン / 環境DNA / 消波堤 |
研究実績の概要 |
今年度もCOVID19の影響で夏季に五大湖の現地調査を行うことができなかった。このため日本で2番目に大きい霞ヶ浦と、五大湖同様に底生緑藻が異常繁茂している宍道湖を対象に予備調査を行った。 大湖沼では吹送距離が長いことで波浪強度が高くなる。霞ヶ浦ではこのため、湖岸のほぼ全域に消波堤が設置されている。共同研究者に確認したところ、五大湖でも一部湖岸に消波堤が設置されている。 湖沼水温は通常、流入河川や人為起源廃水などの影響が少ない湖心部でモニタリングされる。一方、本研究で対象としている底生緑藻の異常繁茂は湖岸域で発生している。波浪が弱くなることで物理的は群落破壊の危険が減ることに加え、湖岸が閉鎖的になることで高温化して、緑藻の繁茂を促進した可能性がある。そこで霞ヶ浦の湖岸 17 地点に水温ロガーを設置して7月~ 9月にかけて水温モニタリングを行った。その結果、消波堤がある湖岸はそうでない湖岸より水温が高くなる傾向が認められた。 環境DNAによるベントス調査の予備調査として、昨年度に引き続き、濾過食者であるイシガイを対象に霞ヶ浦流入河川を対象に環境DNAの検出を行った。今年度は採水対象を底層水とし、また濾過量を昨年度の倍にすることで検出効果を高めた。 底生緑藻異常繁茂の一因としてリン濃度の増加が指摘されている。全リンの定量はペルオキソ二硫酸カリウムで分解後に正リン酸として分析するが、この方法では一部の無機態リンを分解できていないことが明らかとなった。このため本法を改良して環境試料(河川水中懸濁物試料)に適用した結果、従来法に比べて2.5倍高い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度も現地調査を行うことができなかったことから、現地で得られるはずだった成果を上げることはできなかった。しかしながら霞ヶ浦と宍道湖を対象にして、現地調査で用いる手法の改良を十分に進めることはできた。 環境DNAによる底生緑藻捕食者推定に関して、濾過用いるGF/F濾紙の表面に第一段階の抽出試薬であるProtainase KとBuffer ALの混合液を使用量の半分を直接塗布し、残りの量をGF/Fをサリベットチューブに移したのちに塗布する工夫をした。これにより上記の混合液を満遍なくGF/Fに塗布することができた。またDNAを抽出したのちにAMPureXPを用いた精製を行なってから、PCRを行った。これにより抽出DNA内に残っている夾雑物を除去し、PCRの増幅効率が向上した。 底生緑藻が繁茂すると流速が激減し、懸濁物等がその場に沈降する。このため底生緑藻が繁茂している湖沼では、出水時に河川から流入した懸濁物が底生緑藻帯で沈降し、消波堤などで波浪が弱まると嫌気状態になり、リン等が湖底から溶出する可能性が考えられる。今年度の研究成果により全リンを正確に分析できるようになったとともに、植物が利用可能なリンと利用不可能なリンを分別できるようになったので、五大湖の現地調査においては、底生緑藻が繁茂している水域としていない水域で植物が利用可能なリンを比較することで、リン循環の観点から異常繁茂原因を検討できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID19による行動制限が国内外ともに緩和されてきたので、来年度の夏季には現地調査を行うよう準備を進める。過去3年夏に予定していた調査を行えなかった間に、申請時に共同研究者だった現地研究者の研究対象が五大湖から他の水域に変更された。このため新たに現地で共同調査を行える研究者を探し、交渉を行っている。 環境DNAについては底生緑藻(Cladophora属)を対象としたプライマーの開発を行い、現地で繁茂していない水域はもともと底生緑藻がいないのか、繁茂できない環境なのかを推定する手段とする。 水質についてはこれまでに取得した宍道湖のデータと比較できるよう、現地の底生緑藻類腐敗時の水質状況を調査できるタイミングで日程調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も五大湖で底生緑藻の異常繁茂が起こる夏季に、COVID19による行動制限により米国での現地調査を行えず、計画していたことの多くができなかった為。
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