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2019 年度 実施状況報告書

マイクロ力学操作技術を用いた内皮細胞メカノトランスダクション機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19KK0276
研究機関北海道大学

研究代表者

大橋 俊朗  北海道大学, 工学研究院, 教授 (30270812)

研究分担者 東藤 正浩  北海道大学, 工学研究院, 教授 (10314402)
山田 悟史  北海道大学, 工学研究院, 助教 (90730169)
研究期間 (年度) 2019-10-07 – 2022-03-31
キーワード内皮細胞 / メカノトランスダクション / 一次繊毛 / 磁気ナノビーズ / 細胞間力
研究実績の概要

細胞は周囲の力学環境に適応して自らの形態および機能を変化させることが知られている.これは細胞が力学刺激を感知・伝達し生化学的信号に変換しているためでありこの機構はメカノトランスダクションと呼ばれている.例えば,血管内皮細胞は血流に応答して血流方向に伸長・配向することから盛んに研究が行われてきたがメカノトランスダクション機構の全容は明らかではない.本申請課題の目的は,磁気ナノビーズ技術を高度に駆使して流れ刺激に対する内皮細胞の力学伝達経路の推定するものである.近年では,内皮細胞表面に突出する直径0.2ミクロン,長さ数ミクロン~十数ミクロン程度の線状のPrimary ciliumが力学刺激の感知に深く寄与していることが指摘されている.
以上の背景を下,磁気ナノビーズ技術およびマイクロフルイディクス技術により内皮細胞に力学刺激を負荷する部位を空間的に制御し,内皮細胞の流れ負荷応答のメカニズムを新しい視点で探求するものである.研究代表者の大橋がこれまでに従事してきた流れ負荷内皮細胞実験技術,マイクロフルイディクス技術および海外共同研究者のProf. Ibarraより新たに導入する磁気ナノビーズ技術を高度に融合させ,海外共同研究者のProf. Longとともに流れ負荷刺激を模擬して磁気ナノビーズにより力学刺激部位を空間的に制御することにより,流れ負荷によるメカノトランスダクション機構を検討するものである.初年度は,主として基盤となる磁気ナノビーズ導入実験の確立を行った.磁気ピンセットによる磁場負荷によりPrimary ciliumに力学刺激を負荷した結果,Primary cilium内カルシウムイオン濃度の上昇が確認された.また,流れ負荷においても同様にカルシウム応答が確認されたことからPrimary ciliumはメカノセンサとして機能していることが強く示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は,基盤となる磁気ナノビーズ導入実験の確立を行い,力学刺激部位として,1) Primary cilium,2) 細胞膜表面および3) 細胞内部の3箇所の中で1)および2)を集中的に実施してきた.磁気ピンセット等外部磁場を用いて磁気ビーズを導入したPrimary ciliumを変形させることに成功したこと,またPrimary cilium内カルシウムイオン濃度の上昇が確認されたこと,は大きな研究成果である.また,Primary ciliumの曲げ変形によりPrimary ciliumの力学特性計測が可能である,という新しい研究展開も視野に入れている.
また,ラマン散乱光を用いた細胞内低分子量Gタンパク質のダイナミクスの研究項目において,研究分担者の東藤教授と山田助教ととも実験方法について詳細を検討しているところであり,これについては今年度さらに推進していく予定である.

今後の研究の推進方策

研究代表者の大橋がこれまでに従事してきた流れ負荷内皮細胞実験技術,マイクロフルイディクス技術および相手国研究代表者Prof. Ibarraの有する磁気ナノビーズ技術を高度に融合させ,流れ負荷刺激を模擬して磁気ナノビーズにより力学刺激部位を空間的に制御することにより,Prof. Longの有する観察技術とともに流れ負荷によるメカノトランスダクション機構を検討するものである.初年度は,基盤となる磁気ナノビーズ導入実験の確立を行い,力学刺激部位として,1) Primary cilium,2) 細胞膜表面および3) 細胞内部の3箇所の中で1)および2)を集中的に実施した.今年度は1)および2)を継続して実施するとともに,3)の実施および対照実験として流れ負荷実験を行い結果の比較を行う.また,1)Primry ciliumの実験においては,Primry ciliumの曲げ変形から力学特性を計測できる可能性が示唆されたため,Primary ciliumの力学特性計測という新しい研究展開も図る.
また,研究分担者の東藤教授と山田助教とともにラマン散乱光を用いた細胞内低分子量Gタンパク質のダイナミクスについても検討を進める.

次年度使用額が生じた理由

昨年度後半に世界的流行となった新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,各種会議が次々とキャンセルされたことに伴い予定されていた会議出張がキャンセルされたこと,また,共同研究先の大学が閉鎖されたことに伴い共同研究先訪問がキャンセルされたこと,などにより予定されていた旅費が大幅に減少した.さらに,それに伴い実験活動の頻度も減少したため予定されていた物品費も減少した.以上の理由により差額(B-A)が生じた.今年度は,新型コロナウイルスの感染拡大が終息次第,国際会議あるいは共同研究先訪問を積極的に行い,また,実験も着実に進めることで助成金を適切に運用していく予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] University of Zaragoza(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      University of Zaragoza
  • [国際共同研究] Wichita State University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Wichita State University
  • [学会発表] Measurement of mechanical properties of isolated primary cilia using micro-tensile tester2019

    • 著者名/発表者名
      Tien Dung Do, Katsuyoshi Jimuro, Toshiro Ohashi
    • 学会等名
      第42回日本バイオレオロジー学会年会
  • [学会発表] Measurement of mechanical properties of endothelial glycocalyx by using magnetic beads2019

    • 著者名/発表者名
      Li Jingyi, Ricardo Manuel Ibarra, Toshiro Ohashi
    • 学会等名
      日本機械学会第32回バイオエンジニアリング講演会
  • [学会発表] Mechanical Characterization of MDCK Primary Cilia and implications for internal structure2019

    • 著者名/発表者名
      Tien Dung Do, Katsuyuki Jimuro, Cai Haonan, Satoshi Matsuo, Ricardo Manuel Ibarra, Toshiro Ohashi
    • 学会等名
      10th Asian-Pacific Conference on Biomechanics
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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