本研究の目的は,他者と協調する技能,すなわち対人協調技能の学習を促進する学習環境を明らかにすることである.そのために,仮想現実を導入し,学習者が知覚する情報場を調整できる環境を構築し,対人協調技能の学習に最適な学習環境を探索することとした. 当該年度は,新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて,渡航が難しいため,当初の予定通り,3次元の身体動作を計測するモーションキャプチャシステムと,利用者の視野空間をバーチャルで呈示する仮想現実の方法を組み合わせた計測および呈示システムの構築に専念した.具体的には,仮想現実空間にモーションキャプチャの計測点の運動履歴を光流パターンとしてリアルタイムで呈示する方法を組み入れた.このことにより,他者と動きを共にする際に,他者の身体部位または他者が把持する道具の運動パターンを光流情報として,付加的に取得することが可能となる.これは,現実空間においては取得されない情報であり,こうした付加的な情報を対人協調運動において重要な特徴点に付加することによって,他者情報の効果的な取得を促し,協調が促進されるのではないかと考えられる.こうした検討は,他者の動きにまで注意を向けられない初心者のための環境デザインの検討に繋がると考えられる.今後は,簡易的な対人協調課題として多くの研究で導入されている対人の振り子課題を題材に,光流パターンによる付加的情報が,対人協調の秩序変化にどのように関連するのかを検討する.
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