研究課題/領域番号 |
19KK0291
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
細野 高啓 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (30367065)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | 地震 / 火山 / テクトニクス / 水循環 / 地下水 / グローバル / 現地調査 / 特集号 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる令和2年度は、基課題研究『熊本地震による地下水環境変化の全容解明』をグローバルに展開するため、同現象に係る世界の最新事例を取りまとめるべく、国際学術雑誌Journal of Hydrology誌に特集号を出版した。研究代表者が編集長を務め、他国の専門家と共同で世界各国から寄せられた同領域の最新研究を取りまとめた。熊本地域からは11件の投稿があり、そのうち10編が掲載に至った。また、海外共同研究者からも投稿をいただき、熊本以外の7つの国や地域(中国、インド、イスラエル、イタリア、韓国、台湾、米国)から13編の論文が掲載に至った。 特集号出版により、基課題研究でみえてきた直下型地震による地下環境変化は、他地域でも広く観察され一般的に受け入れられる普遍的現象であることが証明された。特に、熊本からの10編の論文は互いに関連付けしてまとめることで、同一の現象を対象に、水位、水質、同位体比、熱、微生物など異なるパラメーターを用い多角面からアプローチし、かつ、統計解析やシミュレーションを活用することで、この複雑な現象を一つのモデルとして統合的に説明できることを実証した。他方、本邦以外からの報告には、グローバルな観測網を用い地球規模で地震による水位変動の強度を評価する方法や、基課題研究では議論できなかった、地震予知に係る新たな方法の提案などが盛り込まれている。結果として、特集号は現象についての世界の最新事例を発信するだけでなく、最新の新たな方法論をも取りまとめることに成功した。これら合計23編の論文を統合する形で、総論を掲載している。 ここまで、世界の事例を取りまとめる活動に専念し重要項目を達成してきた。国際誌による特集号は当該研究領域としては初である。成果は関連研究の発展に活用され、更なる現象理解への突破口になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ過において当初予定していた現地調査は足踏みを強いられている。したがって、現場調査ならびに在外研究については、当初の計画より遅れている。こうした状況下において、リモートでのやり取りを通じ、今実行可能な特集号の出版に全力を尽くした。すなわち、当該研究が目標とするグローバルモデルの創出について、世界で起きている当該現象のとりまとめについては予定より早く進行できている。総合的に判断し、現在までの進行状況としては、おおむね順調といえよう。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査に先立ち、世界で起きている当該現象のとりまとめ作業は順調に進行している。これとは別に、現地調査に係る情報は海外共同研究者を通じて収集しており、今後安全が確保された段階で渡航できる準備は整っている。 今後は予定よりも遅れを取っている現場調査ならびに在外研究について、計画にあった内容を進めていきたいと考えている。これら現地調査に基づく結果については、今後個別の学術雑誌もしくは学会にて発表をしていきたい。コロナ感染に係る移動の制限が一刻も早く緩和することを祈るばかりである。
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