研究課題
初年度にあたる令和2年度は、基課題研究『熊本地震による地下水環境変化の全容解明』で実施した一連の研究成果に加え当該研究領域において世界各国から寄せられた最新の研究成果を募り国際学術雑誌Journal of Hydrology誌に特集号として取りまとめることを達成した。これにより、基課題研究によるローカルな発見をグローバルに展開させることに成功した。続く令和3年度に推進した研究として主として以下に述べる二つがあげられ、それぞれ重要な成果を生み出した。一つ目の研究実績は、令和2年度に出版した特集号に集約しきれなかった研究成果をJournal of Hydrology誌とは別の国際誌に掲載したことである。熊本地域ならびに熊本周辺地域の震源からやや離れているものの一連の断層運動と関連する場所で認められた現象について研究成果として取りまとめたほか、同位体分析や数値解析の結果など関連研究による成果を合わせた合計6本の論文を国際学術雑誌に掲載した。ここでは地震による影響のみに着目しただけでなく、当該研究課題の主関心となるより広い意味での火山-テクトニクス環境が及ぼす地球表層の流域環境への影響を議論している点が特徴と言える。二つ目の研究実績として、当初予定していたアイスランドでの現地調査の実施があげられる。調査は2021年8月から9月の1ヵ月間に実施し、その間、アイスランド大学のInstitute of Earth SciencesのSigurdur Reynir Gislason博士と研究打ち合わせを実施した。調査では現地でレンタカーを借り、アイスランド島全体を対象に河川水、湧水、地下水、地熱水など様々な水試料の採水を行った。採水した試料は熊本大学の研究室に持ち帰り分析の準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度に続く令和3年度での研究活動を通して、当該研究が目標とするグローバルモデルの創出について、世界で起きている当該現象の取り纏めならびにグローバルモデルの提案・発信は予定より早く進行できている。一方、現地における野外調査の実施ならびに現地受け入れ研究者の研究機関での研究滞在については、コロナ過の影響で思うように進まず歯がゆい状況が続いている。しかしながら、2021年7月後半に日本で初めてワクチンパスポートがスタートした直後すぐに行動を起こし様々な準備を重ねることで、また所属大学の多大なるサポートと理解を頂くことで、何とか1ヵ月の野外調査と研究滞在を実施することができた。急遽の決定ではあったものの当時最も受け入れの可能性が大きかったアイスランドに1ヵ月間滞在できたことは、その後また直ぐにオミクロン株の到来で海外調査が困難となった令和3年度の状況に鑑みると、大変意味深いと判断している。海外への研究滞在はまだ当初目標を達成できていないが、成果物の発信は既に目標を達成していることから、現在までの進行状況としては、総合的にみておおむね順調と判断した。
世界で起きている当該現象のとりまとめ作業は順調に進行している。これとは別に、現地調査に係る情報は海外共同研究者を通じて収集しており、今後安全が確保された段階で渡航できる準備は整っている。最近ではコロナ感染に係る移動の制限は緩和の方向が進んでいる。令和4年度は最終年度となるため、予定よりも遅れをとっている現場調査ならびに在外研究に注力し、可能な限り計画にあった内容を進めていきたいと考えている。これら現地調査に基づく結果については、今後個別の学術雑誌もしくは学会にて発表をしていきたいと考えている。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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