最終年度は、イタリア中央山脈ならびにニュージーランド南島において、現地調査を実施した。特に、Sapienza University of Romeの研究グループとの共同研究を通じ、多くの類似点ならびに場に応じた特徴が浮き彫りになり、直下型地震による地下環境変化の普遍性の発見に対する貴重な成果を得たことは意義深い。ニュージーランド南島では、非火山性地域にみられる深部断層活動の痕跡ならびに深部流体の分布を可視化するための水試料を採水することができた。実質的な活動期間全体を通し(2020~2022年度)、新型コロナウイルス感染症の拡大で海外への渡航が極めて困難な中、限られたチャンスを逃さず予定していたアイスランド、イタリア中央山脈、ニュージーランドでの現地調査を実施できたことは大変幸いであった。渡航の計画が予定より大幅に遅れたため、分析や解析が遅くなってしまったが、今後はデータの取りまとめや論文の執筆を計画している。 本研究全体として、基課題研究をグローバルに展開するため、同現象に係る世界の最新事例を取りまとめるべく、Journal of Hydrology誌に特集号を出版できたことは、極めて大きな成果と言えよう。研究代表者が編集長を務め、熊本からの研究論文10編の他、熊本以外の7つの国や地域(中国、インド、イスラエル、イタリア、韓国、台湾、米国)から13編の、合計23編の論文が掲載に至った。これにより、基課題研究でみえてきた直下型地震による地下環境変化は、他地域でも広く観察される普遍的現象であることが証明された。このほか、グローバルな観測網を用い地球規模で地震による水位変動の強度を評価する方法や、基課題研究では議論できなかった、地震予知に係る新たな方法の提案などが盛り込まれている。これら合計23編の論文全てを統合する形で、総論の執筆・掲載を達成した。
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