本研究は古典期アテナイの民主政を、旧来等閑視されてきた演説文化という視点から見直し、実践的修辞戦略という観点から具体的に描き出すものであった。古典期アテナイの法廷や民会が、それぞの環境や歴史的背景に応じて、会衆説得の技法を発展させ、独自の民主政文化を発展させていたことを明らかにした点に、本研究の学術的意義がある。また、アテナイの実践的修辞的技法の多様性と戦略性を明らかにしたことは、民主制の危機が叫ばれる現代において、同時代の政治言説や社会運動を理解する上でも、また今後、熟議的(討議的)民主政治を成熟させていく上でも、有意義な知見を提供することに繋がり、この点に本研究の社会的意義があると言える。
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