研究課題/領域番号 |
19KK0300
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
久保田 慎二 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部附属国際人文社会科学研究センター, 准教授 (00609901)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | 土器 / 炭化種子 / 穀物 / 食文化 / 雑穀 / 学際研究 / 夏王朝 / 二里頭文化 |
研究実績の概要 |
新型コロナにより2020年度から延期していたイギリス・ロンドン大学考古学研究所における研究活動について、現地渡航の目途が立ちつつある。すでに、共同研究者である同研究所のドリアン・フラー教授と手続きを進め、2022年4月下旬あるいは5月上旬より約半年間の渡航を予定している。 また、渡航後に実施する初期王朝時代の炭化穀物利用に関する研究に向けて、遺跡より出土する植物遺存体のデータベース構築を継続して行った。本研究で中心となる黄河中流期に加え、黄河上・下流域、長江中・下流域をも網羅してデータベース化を進めており、中原地区の穀物利用およびムギなどの新来穀物の導入過程も検討することが可能となりつつある。 一方、土器利用については、以前より蓄積した二里頭文化の土器使用痕の情報整理を進め、同文化期の炭化穀物の出土状況を合わせて考えることで、二里頭文化の深腹罐と呼ばれる煮沸器の利用方法を明らかにし、論文化を行った。また、出土穀物データベースを基礎として、土器組成や人骨安定同位体分析の値などを参考に、二里頭遺跡で出土するコメ利用についても論文を執筆した。これらは、本研究の目的である初期王朝期の土器と栽培植物の利用を明らかにするうえで、極めて重要な成果となった。 その他、2021年3月には科研費セミナー「東アジアの食文化を考える」を主宰し、残存脂質分析や日本国内の稲作および稲利用について他分野の専門家と研究交流を行った。本セミナーは、土器利用を多角的な視点から解明するための重要なプラットフォームであり、今後も継続して開催する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの流行により、申請時の予定時期からイギリスへの渡航が遅れている点が主な理由である。しかし、これについては2022年4月下旬あるいは5月上旬から現地で研究できる目途が立った。その他、研究内容については、基礎作業を着実に進めており、大きな問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
ロンドンへの渡航目途が立ったため、現地への渡航後には共同研究者であるロンドン大学のドリアン・フラー教授と世界各地の様々な穀物の利用事例について意見交換を進める。さらに、新型コロナによる各国の対応次第ではあるが、可能であれば中国や東南アジア、中央アジア等で稲や雑穀の利用に関する民族調査を実施する。 2022年度が最終年度ということもあり、上記作業を進めつつ、これまで構築した中国初期王朝期の穀物データベースおよび土器使用痕分析の成果をもとに、土器と栽培植物の利用について復元を進める。また、科研費セミナーを通して文献史等の専門家の意見も採り入れ、より多角的な視点から結論を導けるよう努める。
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