研究課題/領域番号 |
19KK0300
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
久保田 慎二 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部附属国際人文社会科学研究センター, 准教授 (00609901)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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キーワード | 土器 / 穀物 / 栽培植物 / 新石器時代 / 初期王朝時代 / 食文化 |
研究実績の概要 |
令和4年度は新型コロナによる渡航制限等が解除されつつあったため、研究開始当初より予定していたロンドン大学考古学研究所への渡航を実現した。滞在期間は当初の予定から大幅に短縮せざるを得なかったが、約半年間にわたり目的とした雑穀を主とする穀物利用について多くの情報や研究手法に触れる機会を得た。 特に共同研究者との交流の過程で穀物加工の客観的評価基準等について提案を受け、今後の民族資料の新たな分類基準として採用する目途をつけた。また、これまでの考古学的研究では、土器を利用した具体的な調理方法の復元に使用痕分析が用いられてきた。しかし、近年、イギリスを中心に付着炭化物の微構造分析が開始されており、共同研究者がその中心的な役割を果たしている。そのため、報告者もこの方法に触れる機会を多く得ることができ、その分析手順を学ぶことができた。 イギリスからの帰国後には、研究成果をまとめる作業と並行し、付着炭化物の微構造分析を行う設備を整えた。具体的には、実体顕微鏡および有機物を炭化するための電気炉、穀物の調理実験に係る道具などを購入した。また、炭化物の微構造観察を行う際に使用する電子顕微鏡は、熊本大学内で使用できることを確認し、すでに利用手続きを終えている。 以上のように、本年度はロンドン大学における研究活動を通して、現地で触れた最新の研究手法を吸収することができた。そして、日本国内でそれらを実施する準備も整えることができた。令和5年度には実際に継続的な実験を行い、基礎データの収集とともに、出土遺物の観察も少しずつ進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定からは遅れたが、ロンドン大学考古学研究所における研究活動を実施できたことで、その遅れを取り戻すことができた。また、雑穀を中心とした穀物資料やその利用方法に関する情報だけではなく、炭化物の微構造分析という具体的な研究手法に触れる機会を得たことは、非常に大きな収穫であった。以上より、研究は順調に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度を最終年度とする予定であるため、まずイギリス渡航中に得た情報や方法を中国新石器時代から初期王朝時代における栽培植物利用史の中に位置づける作業を行う。合わせて、炭化物の微構造分析の確立に向けて基礎データの収集を行う。そのためには、継続的な調理・炭化・観察という一連の実験が必要となる。年度末までにはこれらの作業を一定量こなし、今後の研究に新たな視点を付加することができる目途をつける。 また、これらの研究成果をまとめ、年度末に論文化を行う計画を立てている。
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