研究課題/領域番号 |
19KK0308
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
武岡 則男 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80434695)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | 認知的最適化 / 時間割引率 / 限定合理性 / リスク選好 / 他者への共感 / 認知コスト |
研究実績の概要 |
この国際共同研究強化Aの基課題では、異時点間の割引率、または時間選好率を、現在の自己の将来の自己への利他性として解釈し、将来の自己への共感の割り振りという認知的最適化によって割引率が決定される仮説・モデルの含意を考察している。行動経済学では、リスク、異時点間選択、利他性、限定合理性など、それぞれの分野において標準的な経済学で説明できない人間行動(アノマリー)を個別モデルで説明する傾向にあるが、基課題は異時点間選択と利他性の関連に着目した点で新規的である。本研究では、認知的最適化理論の枠組みを、行動経済学の主要テーマであるリスク選択や限定合理性などにも拡張し、どのような含意が得られるかを検討する。認知的最適化の含意をさらに深化させ、その射程を広げることで、人間行動の様々な側面を統一的な観点から理解できるようになれば、行動経済学への重要な貢献となる。2021年度は、基課題の研究(Optimal Discounting)を経済学のトップジャーナルであるEconometrica誌に掲載した。また、関連研究として、限定合理性の要素を取り込み、将来の自己への共感・利他性の割り当てに上限のある制約付き最適化の結果として割引率の内生的変化を説明するConstrained Optimal Discountingの研究を推進した。また、リスク下の選択モデルとして著名なプロスペクト理論にあるように、結果の利得・損失を区別し、参照点からの変化として結果集合を一般化したOptimal Discounting with negative consumption utilityの研究も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の概要で説明した通り、基課題から引き継いだ研究プロジェクトである認知的最適化による時間割引モデルの研究が、経済学のトップジャーナルであるEconometrica誌に掲載された。本課題はこの研究をさらに発展させるものである。限定合理性、リスクなどの要素を取り込んで、認知的最適化という枠組みで説明できる選択行動を拡張することを目指している。限定合理性の要素を取り込み、将来の自己への共感・利他性の割り当てに上限のある制約付き最適化の結果として割引率の内生的変化を説明するモデルについてはワーキングペーパーを完成させた。また、結果の利得・損失を区別し、参照点からの変化として結果集合を一般化させた研究についてもワーキングペーパーが完成している。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で述べた2本のワーキングペーパーを学術誌に投稿し、早期の採択を目指す。2022年度は共同研究者のいるボストン大学を訪問している。この期間に集中的に研究を実施したいと考えている。
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