現在、コンテンツ利用許諾と使用料の徴収・配分の場面において、クリエイター(創作者)に正当な対価が還元されない問題が指摘されている。「使用料の徴収と配分の正確性と効率性」を果たすためには、著作権集中管理団体のほか、コンテンツ流通の関係者らが有する全ての著作権関連情報の透明性(transparency)が必要である。多くのコンテンツがオンラインプラットフォーム(online platform)で流通されているという現状で、プラットフォームの積極的な役割なしでは適切な対価還元は不可能である。 本研究は、近時のEUデジタルサービス法(DSA)規則案をはじめとする欧米のオンラインプラットフォーム規制を検討し、クリエイターへの正当な対価還元のために開示されるべき情報とプラットフォームの役割を考察することで、クリエイターへの正当な対価還元のための法制のあり方を比較法的に研究するものである。 2022年度はオンライン学会および海外現地調査(スペイン・中国・韓国)を行い、①オンラインプラットフォーム規制の現状、②クリエイターへの正当な対価還元のために、プラットフォームの透明性義務の対象に含まれるべき著作物関連情報は何か、③現行のプラットフォーム規制から変わるべき点は何かなど、デジタルプラットフォーム産業を規制する法制や政策に関する動向をヒアリングしてきた。 2023年度は、DSM著作権指令19条1項が規定する「透明性の義務」に焦点をあて、①各会員国が行う立法および政策の動き、②DSM著作権指令の意義とインパクト、③多国籍オンラインプラットフォームの欧州域内におけるDSM著作権指令への対応や関連法制のその後の推移や政策立法の動向を、フランス出張および国内出張にてフォローアップし、クリエイターへの正当な対価還元の前提となる「情報透明性」を比較法的に検討し、論文および学会発表を行った。
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