本研究の課題は、タイ・バンコクを事例に、インフォーマリティを巡る包接と排除のダイナミズムとその衝突の様相を明らかにすることである。都市における生産と再生産の議論を架橋するためのの新しい理論的アプローチを模索・構築しながら、バンコクにおいて詳細なフィールド調査を実施し、基課題(基盤研究A「インフォーマル化するアジア」)に実証的基盤を提供することを目指している。 2023年度(最終年度を繰り越し)の成果は以下の通りである。第1に、コロナ禍によって延期となっていた実態調査をバンコクにて実施した。チュラーロンコーン大学では、在外研究の受入れでご尽力下さったWorawet先生のみならず、Akkanut先生とインフォーマリティ研究に関する議論を続けている。またタマサート大学のNattapong先生、シーナカリンウィロートのThongchart先生と共同で、バンコクの格差に関する研究を進めた。第2に、LSEに2022年に提出したワーキングペーパーを改定し、英文ジャーナルの特集号に投稿した(現在、査読コメントを受け、修正中)。第3に、バンコクの格差研究に関しては、分析を深めた後、2023年11月には京都大学東南アジア地域研究研究所のワークショップで発表した。現在、共著論文を執筆中である。第4に、LSEでのカウンターパートであるHyun先生を、2023年6月に埼玉大学に招聘し、国際ワークショップを開催した(基課題と連携、ハイブリッド)。国内外から多くの参加者を得た。公開した録画にも多くのアクセスがある。また、前述の京都大学のワークショップのために、タイから共同研究者を招聘した。第5に、これらの論文の刊行の後、単著をまとめる予定であり、出版社と打ち合わせを続け、目次を確定した。現在、第1章-3章の執筆を進めている。またRoutledgeから刊行した共著にも調査内容からの知見を反映させた。
|