研究課題/領域番号 |
19KK0319
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池内 恵 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40390702)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | グローバルセキュリティ / 国際安全保障 / テロリズム / イスラエル / ジハード / アラブ首長国連邦 |
研究実績の概要 |
今研究課題の主眼は、2001年以後に米国が主導した「対テロ戦争」において、いずれも米の同盟国でありながら、2020年まで公式的な外交関係がないままであったイスラエルと湾岸産油国、あるいはイスラエルとの政治・外交関係が良好ではないトルコが、水面下で行ってきた治安・安全保障協力関係の最新の動向を、現地に拠点を築いて調査することにある。中東の国際安全保障において重要性や主導性を高めるイスラエルに重点を置き、日本の大学・研究機関として先駆的に、関係構築を進め、イスラエルを拠点に湾岸産油国やトルコを含めた中東の主要国との相互関係を内在的に、現地の実態に即した形で解明し、それによって国際安全保障の調査研究の基盤形成を進めることが本研究の趣旨である。 2021年度は、コロナ禍による出入国制限が年度を通してかかったため、実際の現地への渡航の開始は大幅に遅れ、年度末に近い2022年3月に初めて可能になった。テルアビブ大の上級客員研究員に任命され拠点形成を行い、新たにライヒマン大との安全保障に関する共同研究に着手した。また、オンラインでのテルアビブ大・ヘブライ大等のイスラエルの大学・研究機関との関係強化を進め「イスラエル月間」を2022年2月ー3月に開催すると共に、UAEの安全保障シンクタンクとのリモート会議を行なった。そしてイスラエルのテルアビブで開催した国際研究集会により、2020年のアブラハム合意以降のイスラエルと湾岸産油国の関係構築の急展開を内在的に観察した。その過程で、イスラエルと湾岸産油国が関係を強化しつつ、米国の水面下での働きかけに応じ、トルコとの関係改善に転じたことを確認した。またイスラエルと湾岸産油国が、中国および日本・韓国を念頭に、三者関係による東アジアとの関係構築を目指す兆しも観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度(2021年度)は、2022年2月から3月にかけて、テルアビブ大、ヘブライ大等のイスラエルの大学・研究機関と10回以上のオンライン・シンポジウムを連ねる「イスラエル月間」を開催し、2022年3月には実際にイスラエルに渡航し、テルアビブ大モシェダヤン中東アフリカ研究センターの客員研究員に任命されて拠点形成を開始し、テルアビブ近郊のライヒマン大との研究交流にも着手し、イスラエル・日本・湾岸産油国の三者関係をめぐるシンポジウムを対面で3月16日に開催することができた。 しかし本研究課題の推進はコロナ禍による渡航制限により大きな制約を課された。当初の計画では、年度内に3回に渡りイスラエルに渡航してテルアビブ大モシェダヤン中東アフリカ研究センターに長期滞在し、そこを拠点に、アラブ首長国連邦やトルコや英国等に渡航し、イスラエルの湾岸産油国等の中東主要国との関係を調査することを目指していたが、渡航制限および、複数国を横断した渡航が著しく困難である時期が続いたため、オンラインによる研究交流に限定せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度(2022年度)は、当初の計画では本研究課題の最終年度であり、計4回の渡航で、計5ヶ月程度をイスラエルに築いた拠点から活動し、国際研究交流の加速化を進める。しかし依然としてコロナ禍による出入国制限がかなりの程度課されており、また、ロシアのウクライナ侵攻による国際航空ルートの大幅な乱れから、複数国間の移動を伴う調査研究活動を実施することに多大な困難が伴っている。そこから、今年度はイスラエルへの渡航と拠点活動に専念し、UAE、トルコ、英国等への渡航は、可能になった時点での限定的に行う。
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