本研究課題の主眼は、2001年以後に米国が主導した「対テロ戦争」において、いずれも米の同盟国でありながら、2020年まで公式的な外交関係がないままであったイスラエルと湾岸産油国、あるいはイスラエルとの政治・外交関係が良好ではないトルコが、水面下で行ってきた治安・安全保障協力関係の最新の動向を、現地に拠点を築いて調査することにある。日本の大学・研究機関として先駆的に関係構築を進め、イスラエルを拠点に湾岸産油国やトルコを含めた中東の主要国との相互関係を、現地の実態に即した形で解明し、国際安全保障の調査研究の基盤形成を進めることが本研究の趣旨である。 2020年度の初頭からコロナ禍による厳しい出入国制限がかかったが、2022年3月から他に先駆けて現地への渡航を開始し、いち早くコロナ対策のための行動制限・入国制限を緩和したイスラエルに焦点を絞り、 2022年5月以降に、5回にわたる渡航、合計6ヶ月に及ぶ滞在を行い、テルアビブ大の上級客員研究員として拠点形成と成果発進を行った。また、ライヒマン大学やヘブライ大学との関係も並行して強化し、トルコのイスタンブールおよびアンカラへの訪問も行なって、中東地域の安全保障秩序の変容に関する共同研究を進めた。 2022年10月にはヘルツリヤのライヒマン大学で国際ラウンドテーブルを、テルアビブの国家安全保障研究所(INSS)と非公開ラウンドテーブルを、テルアビブ大学モシェダヤン中東アフリカ研究センターと国際シンポジウムを開催し、イスラエルと湾岸産油国が軸となった中東の秩序変容がI2U2によってインドとの関係許可につながり、中東の地域大国のアジア志向を強化・加速することが確認された。また、中東とアジアを横断するミニラテラルな外交・安全保障上の枠組みの形成を模索する中東および南アジアの地域大国に対して、日本の立ち位置を再構成する必要性が確認された。
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