本研究の目的は、「西アフリカ稲作革命」と呼ばれる農民自身が自力で水田開発を進めている「内発性」の内実に「在地化」という研究視点から迫ることにある。さらに、本研究のプロセスを西アフリカの多領域の研究者らと共有し、西アフリカ農民の「生活知」を軸とした超学際的(Trans-disciplinary)研究の「枠組み」を構築することにある。 上述したこれらの目的を達するには、なによりもまず現地に赴き、農民の「生活知」に迫るための現地フィールドワークが不可欠である。しかし、新型コロナの世界的な拡大のため、渡航時期、研究開始期間を延期してきた。2024年度からの本格的な現地調査に向け、2022年度は準備期間として活動してきた。 2023年度から研究事業開始に向けて、ガーナ国立土壌研究所、ガーナ国立作物研究所、調査地となるAdgyama村の人々との連絡や打合せを進めている。また、文献を用いた理論研究も進めている。具体的には、土地利用に深く結びついている酋長制度などのアシャンティ文化や歴史に関する文献を収集し読み込んでいる。さらに、本研究の基調をなす「生活研究」を西アフリカ社会に展開するための理論的研究も進めている。生活研究は「イエ」概念を基本的な生活単位とした世界観から常民の生活知に迫ることを得意としてきた。その理論枠組みをそのまま西アフリカ社会に適応することはできない。そこで、松田素二(1996)『都市を飼い慣らすアフリカの都市人類学』に学びながら、西アフリカ社会の歴史・社会条件に応じた生活単位から常民の知に迫る分析枠組みの構築の試行錯誤を試みている。
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