研究課題/領域番号 |
19KK0324
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
江藤 祥平 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (90609124)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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キーワード | 立憲主義 / オーストラリア / 比較憲法 |
研究実績の概要 |
研究計画の三年目にあたる2022年度は、8月までは日本を拠点としていたが、9月よりシドニー大学に拠点を移して、対面での国際共同研究の実施にこぎつけることができた。以下では、二点に絞って実績を報告したいと思う。 第1に、日本とオーストラリアにおける政府の新型コロナウィルス対策の比較研究を実施した。過去に類を見ないコロナ禍にどのように対応するかは、各国の立憲主義のかたちを知る上で試金石となった。この点、日本はウィズ・コロナ、オーストラリアはゼロ・コロナという対照的な政策を採用したが、それはオーストラリアの方が自由の喪失度合いが大きかったことを意味しない。むしろ、日本型の行動規制(自粛)の範囲も不明確なままに蔓延と続く規制の方が、立憲主義の核心である公私の区分を蔑ろにした可能性があるとの結論に至った。かかる報告は、11月1日にシドニー大学の研究会で発表され、2024年度にその一部を『公法研究』(2024年)の誌上で公表の予定である。 第2に、1975年に連邦総督がWhitlam首相を解任した事件をめぐり、立憲主義の比較という見地から再評価を加えた。オーストラリア憲法は、アメリカ型の連邦制とイギリス型の議院内閣制のハイブリッドとして成立しており、この点でアメリカ型の違憲審査制とイギリス型の議院内閣制のハイブリッドとして成立する日本とは共通項がある。この二つの異なる立憲主義のモードが衝突したのが1975年憲政危機であり、同じ衝突が昨今の日本の立憲主義をめぐる議論の背景にみられることを本研究は明らかにしている。その内容をまとめた詳細は、「一橋法学」(2024年)で公表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画の三年目にあたる2022年度は本来であれば最終年度に当たる予定であったが、本研究の開始時期である2020年度はちょうどパンデミックの開始時期と重なるという不運から、本研究に不可欠となるシドニー大学での共同研究開始が2022年9月開始までずれ込む結果となった。そこでやむなく研究計画の1年間延長を願い出て、4ヵ年計画で、ようやく当初の研究計画に追いつく見通しが立ってきたところである。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度にあたる2023年度では、主に研究報告および実績公表のアウトプットを中心とした作業に注力する予定でいる。2023年8月まではシドニー大学で研究を執り行うため、それまでは現地での情報収集や提供に努める予定である。他方、9月以降の帰国後に実績を論文にまとめて公表するつもりでいる。
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