経営資源の流動性の程度は、イノベーションの生成とそのコストにどのような影響を与えるのだろうか。これが、本研究課題の基本的な問いである。ヒト・モノ・カネといった経営資源の流動性の高さは、イノベーションを促進すると先行研究では考えられてきた。それらの流動性を高める政策が日本を含み様々な国でとられている。しかしながら、本当にこれらはイノベーションを促進するのだろうか。本研究では、次の3つの点を中心に分析していく。それらは、①経営資源の流動性はどのように変化するのか、②イノベーションの生成のパターンに与える影響、そして、③イノベーションのコストに与える影響についてである。流動性が高い(高まった)アメリカやイギリスと流動性が低かった(低くなった)日本の企業の長期的な時系列の比較分析を通じて、流動性が高まることがイノベーションの生成のパターンとイノベーションのコストにどのような影響があるのかを分析していく。 2021年度は、上記の①と②の分析のために、アメリカのデラウェア州にあるハグレー図書館においてアーカイバル・ワークを行った。より具体的にはアメリカの企業が整理解雇を行う上でどのような議論を行っていたのかについての企業の内部資料の収集を行った。また、2021年12月には経営史学会で本研究プロジェクトについての概要と中間的な成果を発表した。
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