研究課題/領域番号 |
19KK0334
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
保田 隆明 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (90581546)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | ソーシャルファイナンス / クラウドファンディング / 海外案件 / 大企業案件 / ベンチャー企業 / 中小企業 |
研究実績の概要 |
本国際共同研究は、Demand Pull型市場創出による地方創生の可能性について研究し、地方の中小企業の企業力向上に必要なエコシステム創出に向けた政策的提案の導出を目的とする。ソーシャルファイナンスでは資金提供者がそのまま財やサービスの購入者・利用者となるケースが多く、その新たな市場が登場したことで新商品開発や起業をする地域事業者が登場している。これは、機会さえ提供されれば地域事業者でもイノベーティブな取り組みをしうることを意味する。そこで、需要を先に創出することで企業の新商品開発やイノベーションを促進するというDemand Pull仮説による地方創生の可能性を研究する。 今年度は、国内の購入型クラウドファンディング(CF)における、海外案件および大企業案件の影響度合いを明らかにすることで、国内の購入型CFの全貌を明らかにすることに貢献した。購入型CFは、ベンチャー企業や中小企業のイノベーション創出、それを通じた地方創生など様々な期待が高まる一方、その中身についてはこれまで明らかにされていない。そこで、今回、国内の主要購入型CFサイトでの資金調達上位案件を分析した結果、米国の購入型CFサイトで成功した案件の割合が高いことが判明した。また、CFサイトの収益に与える影響では大企業タイアップ案件の割合が大きいことが示唆された。海外案件、大企業案件はCFサイトの収益最大化と案件の質向上に寄与するが、それは競合環境としては一般のEC市場と似てくる可能性も意味する。そして、ベンチャー企業、中小企業にとっては従来以上に商品の質の担保が求められる状況を意味し、資金調達のハードルは上がっていると考えられる。 分析は、CFにおける日本市場の特殊性、特異性を浮き彫りにする形となり、特に米国のCF市場との対比を通じて課題意識がより明確にすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に、Demand Pull仮説とProduct Procurementのわが国における地方創生への有効性の検証を、購入型CFの資金調達上位案件について分析をしたことで明らかにした。これは、当初研究計画に沿うものであり、特に、米国のCF市場についての知見を共同研究者から得たことが非常に大きく貢献してくれた。ふるさと納税については、洋書を取りまとめ中であり、また、インパクト投資についても共同研究者とともにその進展状況についてリサーチを進めている。概ね予定通りの進捗度合いと言える。
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今後の研究の推進方策 |
購入型クラウドファンディングについては、予定通り研究を実施することができたので、今後は、ふるさと納税の海外への訴求と社会的インパクト投資に関しての研究を進めていく。前者については洋書を執筆しており、2021年度中に刊行予定である。また、後者については、最新の状況についてスタンフォード大学で開講されている授業などの聴講も含めて、研究を進めているところである。
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