2019・2020年度にオンラインを活用して英国の共同研究者との打ち合わせを重ねた上で、2021年度4月から11月までの7か月間、英国スコットランドのグラスゴー大学の客員研究員として、調査研究を大きく3本実施した。1つは、里親支援ソーシャルワーカーを対象としたインタビュー調査「スコットランドにおける里親ソーシャルワークの価値と実践」である。分析の結果、「子どもに家庭を」という原理原則が最優先されて措置決定や措置後の支援が展開されていることが明らかになった。2つめは、スコットランドの児童養護施設職員へのインタビュー調査である。里親不調を経験して施設に入所してくる子どもたちを受け入れるにあたって大切にしていることや特に配慮していること等について明らかになった。3つめは、里親および里親家庭で生活した経験のある子どもへのインタビュー調査である。行政や支援者は里親に「無償の愛」に基づく養育や実践を求めているのに対して、里親は「職業として認められること」を求めていることが明らかになった。また、民間フォスタリング機関と公立フォスタリング機関とのサービス格差の問題も浮き彫りになった。里親家庭で育った経験のある当事者へのインタビュー調査結果からは、里親と「家族」になっていくプロセスの難しさと実親への思いや忠誠葛藤、里親家庭を巣立った後のアフターケアの必要性が示唆された。
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