研究課題/領域番号 |
19KK0339
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
豊田 真穂 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20434821)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2024
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キーワード | 優生保護法 / 人口政策 / 優生学 / 生殖の管理 / グローバル史 / 断種法・断種/不妊手術 / 避妊・受胎調節・家族計画 / 中絶 |
研究実績の概要 |
優生保護法(1948-1996)は、過剰人口という戦後の課題を解決するために、ナチ断種法(1933年)に影響を受け、戦時下に成立した国民優生法の改正したものと理解されている。しかし、ナチ断種法が米カリフォルニア州断種法等を「モデル」としていたこと、人口問題は戦後世界におけるグローバル課題として戦時下から問題視されていたことなどを考えれば、日本の優生保護法は、優生学と人口政策をめぐるグローバルな歴史のなかに位置づける必要があるだろう。本国際共同研究は、当初は、戦後日本における優生政策のアメリカ・モデルを実証的に明らかにすることを検討していたが、研究をすすめる中で、さらにグローバルな展開にも拡大する必要が明らかになったため、アメリカだけでなく、イギリス、ドイツ、オーストラリア、韓国を専門とする共同研究者を加え、新たな優生保護法史を切り拓きたい。 これまでに、寺尾範野(イギリス)、Aiko Takeuchi-Demirci(日米)、有賀ゆうアニース(日本)、紀愛子(ドイツ)、小野直子(アメリカ)によるそれぞれの研究報告とその後のディスカッションを行うシリーズ「戦後優生政策の国際比較」の連続公開講座を実施した。その後、研究代表者は、2022年夏からコロンビア大学に滞在し、共同研究に関する打合せや、ロックフェラー文書センター、メリーランド大学プランゲ文庫、スタンフォード大学フーヴァー研究所などにおいて史料調査を行った。 2023年6月には、Matthew Connnelly、Sarah Kovner、Christine de Matos、Jaehwan Hyunらを東京に招へいし、早稲田大学で公開国際シンポジウムを開催した。優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)の共同代表・大橋由香子から有益なコメントをいただいた。また翌日には、国際共同研究のメンバー全員(12名)がそろって、共同研究の成果報告(出版)にむけたワークショップを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の国際シンポジウムおよび国際ワークショップによる、国際共同研究の成果を2024年度中に出版する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中の研究成果の公表(出版)に際しては、日本語への翻訳だけでなく、事実関係の確認だけでなく、言葉の細かな選択においても、綿密なコミュニケーションが必要となり、各専門領域における知見に関して必要な校閲作業があるため、それらをそれぞれの専門家に依頼し、現著者とのやり取り等のコーディネイトを密にして、正確を期する計画である。特に、成果報告にかかわる最後の調整のため渡米し、最終的な研究打ち合わせと、どうしても確認しておきたい資料の調査を実施する予定である。 以上のような研究成果をまとめて、本年度中に研究成果を発表する見込みである。
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