半線型熱方程式の一意性に関連して,対応する定常楕円型方程式の特異解の構成を行った.モデルとなるべき乗非線形項の場合については,特異解の一意性(多分存在性)や発散のオーダーがべきの大きさに依存して劇的に変化することが知られている.特に空間3次元以上の場合については,Serrin指数やSobolev臨界指数といった閾値の存在が既存の研究によって明らかにされてきた.一方,空間2次元の場合には,これらの臨界指数が形式的に全て無限大となることから,べき乗非線形項は全て劣臨界の挙動を示し,高次元以上で見られた閾値は明らかになっていない.本研究では昨年に続き,空間2次元において指数型の非線形項を持つ半線形楕円型方程式を考察し,まずモデルケースとなりうる具体的な非線形項を発見した.続いて一般の非線形項に対してモデルケースへと帰着する方法論を開発し,一般的な指数型非線形項に対して汎用的な特異解構成手法を構築した.得られた結果はジャーナルへ投稿中である.現在はこの閾値の存在証明に取り組んでいる.なお本研究はMilano大学のBernhard Ruf氏,Elide Terraneo氏,および静岡大学の藤嶋陽平氏との共同研究である. Firenze大学のAndrea Cianchi氏と共に,分数階微分指数を持つ空間におけるHardy不等式の構築に取り組んだ.その予備的研究として,東北大の澁谷恭亮氏と共同で,Orlicz空間におけるSobolevノルムの同値表現を証明し,この結果は専門欧文誌に掲載された.Cianchi氏との研究では分数階微分指数を持つ空間の特徴づけとしてGagliardo セミノルムを採用し,考察する領域にLipschitz境界条件を課すことでHardy不等式が成り立つための可積分性に対する条件を特定した.さらに得られた結果を論文として投稿すべく,結果を整理して証明の細部を詰めた.
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