研究課題
本課題は韓国科学院(IBS)相関電子系センター(CCES)と東京大学物性研究所(ISSP)が共同で進めているプロジェクトに基づく。ソウル大にISSP-CCES共同ラボを新設し、レーザーと光電子分析技術を用いた分光手法の開拓と研究を推進することが目的であった。特に光電子分光法において遂に実現したスリットレス分析器を駆動・高度化することで新しい学術の展開を目指した。共同ラボの無塵・恒温化を図りつつ、光ファイバーで構成される100MHzのフェムト秒域ARPES光源をさらに高度化し、通常環境でこれを動作させるノウハウを構築した。この小型光源を共同ラボのスリットレス分析器に導入し、従来を1-2桁上回る<1 meVの精度で仕事関数を測定する新原理を実証した(Commun. Phys. 2020)。この手法を応用して、仕事関数の光パルス応答を高精度で測定し、表面分極の非線形感受率を見積もる新しい方法を提案した(Submitted)。この他、小型10MHzファイバーレーザーを備えた表面第2高調波観測装置を自作し、遷移金属カルコゲナイドの研究に繋げた(Rev. Sci. Instrum. 2021)。スリットレス分析器は光源の繰返し周波数が約1 MHzの場合に最も効率よく動作する。1 MHzのパルスレーザーは概して大型であるが、光ファイバーを用いて小型化が図れることに着目した。開発した共振器光路長300mのフェムト秒域レーザーは、手のひらの上で動作するばかりでなく、最大17.7Gの落下衝撃にも耐えた。最終年度は、ファイバーレーザーを自作する環境を東大理学系にて構築し、さらに1 MHzレーザーがオフィス環境において1か月以上安定して動作することを確認した。東大理学系にもスリットレス光電子分析器がある。この新たな光源としてのみならず、高強度パルスを通常環境で使用できることによる新展開が拓けた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
i-Perception
巻: 14 ページ: 1-10
10.1177/20416695231175598
Physical Review B
巻: 106 ページ: 195430
10.1103/PhysRevB.106.195430
https://engineeringcommunity.nature.com/posts/measuring-the-work-function-precisely