研究課題
本研究は,貝塚など古人類の遺跡から得られる貝殻試料から気候変動や古人類の生態など,考古学的情報を復元することを目的としている.そして国際共同研究を介して,人類と環境の相互作用を解明するための共同研究基盤を構築し,考古学・地球化学・古環境学との学際的な新たな研究分野を切り開くことを目的としている. 本研究ではPrendergast博士を中心としたメルボルン大学の考古学研究グループとの長期的な共同研究体制の構築を目指すため,代表者白井がメルボルン大学に長期間滞在し共同研究を通した交流を行う予定であった.しかし,2021年度も2020年度に引き続き,新型コロナウイルスの影響で渡航することが叶わなかった.メール等の研究交流は進めているものの,共同研究基盤の構築という観点では進捗は遅れていると言わざるを得ない.研究については,国内で進めることが可能な内容に焦点を絞った.本研究の目的の一つである,ネオジム同位体比を用いた考古遺物の長距離交易の解明に向けて,現生試料を用いた検証を進めた.日本と中国の各地のアサリのネオジム同位体比を分析し,ネオジム同位体比が産地ごとに大きく異なる特有の組成を示すことを明らかにした(Tanaka et al. 2022, Food Chemistry).今後,考古試料に特有な課題となる続成作用の影響等を評価したうえで,考古遺物に適用することで,貝殻遺物の長距離交易の解明に多いに貢献すると期待できる.また,アンデスのクルス・ペルデ遺跡から出土する貝殻についての共同研究についても実施した.
4: 遅れている
2021年度も2020年度に引き続き,新型コロナウイルスの影響で渡航することが叶わなかった.また,メルボルンは厳格なロックダウン状態であり,日本国内の調査も新型コロナウイルスの影響で想定通りには進まず,当初の研究計画からは大幅に遅れてしまった.新型コロナウイルス感染症の影響で研究に大幅な支障をきたす状況が継続したため,十分な研究期間を確保できるよう,研究期間の延長を強く希望する.
課題申請時には業務を調整し連続して長期間滞在する見込みが立っていたが,新型コロナウイルスの影響で渡航計画の変更を余儀なくされたため,長期連続して滞在することは難しそうである.2022年度は,4月1日時点でオーストラリアの入国制限は解除されているため,短期間になってはしまうが,複数回に分けてメルボルン大学に滞在し研究を進めるとともに,共同研究体制の構築を進める予定である.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件)
Food Chemistry
巻: 382 ページ: 131914~131914
10.1016/j.foodchem.2021.131914
Radiocarbon
巻: 63 ページ: 1629~1644
10.1017/RDC.2021.98
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 569 ページ: 110346~110346
10.1016/j.palaeo.2021.110346
Marine Environmental Research
巻: 163 ページ: 105149~105149
10.1016/j.marenvres.2020.105149