研究課題/領域番号 |
19KK0352
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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キーワード | Sclerochronology / 成長線 / 同位体 / 貝塚 / 古環境 |
研究実績の概要 |
2022年度は新型コロナウイルス感染症の状況が改善し,オーストラリアが外国人の受入を開始したことを受けて,約3ヶ月を2回,メルボルン大学のAmy Prendergast博士の研究室に滞在し研究を行った.定期的に開催されるセミナーに参加したり,研究室の学生のメンターを一部引き受けるなどし人的交流を深めた.学内のセミナーで発表したり,学内のイベント等に積極的に関わったり,Australian Quaternary Associationにて研究発表するなどして人的ネットワークの拡大に努めた. 合同フィールド調査を実施し,考古学的試料を用いた研究で気をつけるべき点や,現地調査の実施法,分野融合的な視点,オーストラリアの考古人類史,などについて幅広く知見を習得した.特に,先住民への敬意の重要性や,そのための手続の踏み方など,日本と文化が大きく異なる点に由来する差違について習得できたことは意義が大きい. オーストラリアの試料として,現代でもオーストラリアの沿岸部に広く生息し,貝塚などの考古遺跡でも頻繁に出土するDonax deltoides(いわゆるPipi clam)を研究対象とすることとし,オーストラリアの複数地点から採取した現生の殻試料を用いたキャリブレーション研究を進めた.貝殻は主成長軸にそって切断し,断面を研磨したうえで成長線を観察した.その断面についてデンタルドリルで成長方向に切削し粉末試料を分取し,その安定同位体組成の分析を行った.その結果,非常に成長速度が速く,かつ,水温変動に起因する明瞭な酸素同位体比の季節変動が見られることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響で滞在予定期間から後ろ倒しになり,かつ期間も短くなってしまったが,実際に相手国研究者の研究室に滞在し研究を進めることで研究が急速に進んだ.特に人的交流を深められたこと,人的ネットワークを拡大できたこと,現地の調査を実施し試料を入手できたこと,は実際に滞在して研究を進められたことに起因する部分が大きく意義が高かった.滞在中にさらなる研究の発展のため今後の計画について密接な議論を行った上で二国間共同研究オープンパートナーシップに申請したが,あいにく不採択となった.このような将来的な研究の発展にまで進められたことは重要な成果であると考えている.短期間の滞在ではあったが,密度の高い研究生活を送ることができ,非常に効率的であったと思う.
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月に6th International Sclerochronology Conferenceを東京大学本郷キャンパスにて主催する.その際に相手国研究者のAmy博士と研究室の学生全員のみならず,Amy博士の知人も複数来日し会議に参加する予定である.その会議にて,日本側研究者白井の研究室に所属する学生や本分野に関連する日本人研究者との交流の機会を設けることで更なる国際共同研究の体制構築を目指す.また,その際に日本の貝塚や地層などの合同フィールド調査を実施することで,人的交流を促進するのに加え,日本の貝塚試料を用いた新たな研究可能性についても議論を行う. 研究については,引き続きDonax deltoidesの成長線解析と安定同位体分析を継続して実施する.分析した個体数がまだ十分でないため,個体数を増やすことで,共通した環境応答のシグナルを引き出す.現生試料を用いたキャリブレーション研究についてまとまった結果が得られ次第論文を執筆する.また,オーストラリアの貝塚考古試料についてはAmy博士が入手の交渉を進めており,目処が立ち次第分析・解析に取りかかる.
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