研究課題/領域番号 |
19KK0354
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
祖谷 元 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70386720)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | 宇宙物理 / 重力波 / 超新星爆発 / 中性子星 |
研究実績の概要 |
原始中性子星における星震学的立場からの線形解析を通して、超新星爆発時に放出される重力波シグナルの物理的な背景を探ることを目的としている。線形解析の背景モデルとして、重力崩壊型超新星爆発の2次元数値シミュレーションにより得られた数値データを用いて原始中性子星モデルを用意する。特に、表面密度を適当に仮定することで、その内側における原始中性子星からの重力波振動数を系統的に調べた。この際、これまでと同様に、星は各時刻で静的な球対称モデルと仮定した。その結果、数値シミュレーションに現れる重力波シグナルは、原始中性子星の基本振動数(コアバウンス後の初期は第1重力モード)に対応することを示した。また、基本振動数の時間進化は、原始中性子星の表面密度の取り方には基本的には依存しないこと、およびこれは基本振動に対応する振動エネルギー密度が星の内部で優位になるということから説明できることを示した。また、同様に第1重力モードの振動数が時間とともに減少する過程が一般的に見られるが、これも重力モードの振動エネルギー密度の分布と、重力モードと物理的に関連するブラント・バイサラ振動数との関係から理解できることがわかった。さらに、先行研究では計量の摂動を無視した線形解析(カウリング近似)を用いた計算であったが、今回、計量の摂動を取り入れた解析を行いこれまでの結果と比較することで、これまでの近似が定性的には正しいこと、および近似の精度に関して定量的な確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の計算では無視されていた計量の摂動を取り入れた解析を世界で初めて行うことで、従来の計算結果が定性的には正しいこと、およびその精度を定量的に示すことに成功した。また、従来の原始中性子星モデルにおいてやるべきことは、一通りやり終えたので、来年度に向けて良い足場を作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
従来の原始中性子星モデルでは、各時刻で静的球対称と仮定している。一方、実際の原始中性子星では、星外部からの物質降着があるため、動径方向の運動が星内部でも生じている。そこで、まずは球対称ではあるが動径方向の流体の運動を含む原始中性子星モデルを用意し、その上での線形解析を行うことを考えている。そのための摂動方程式の導出、固有値問題を解くための数値コードの作成を行う必要がある。さらに、星外部の物質分布を考慮すべく、境界条件を星表面ではなく衝撃波面で与えることを考えている。背景モデルとして動径方向の運動を取り入れることで、これまでのモデルでは説明ができなかった重力波シグナルの説明ができるかもしれない。
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