新型コロナウィルス感染拡大にともない延期を続けていた渡航が2022年3月末にようやく実現した。3月28日にフランスのリールに到着し、受入研究機関の関係者と共同研究の内容について議論し、ペルー沖の前弧域の音波探査記録の解析及び新型アナログ実験装置を用いた沈み込み帯の再現モデルの構築を主なテーマとして設定した。ペルー沖の方は、4月から6月頃にかけて、解析を実施し、前弧域において埋没する海底谷の過去の地形や堆積物の堆積様式を明らかにした。一方、アナログ実験の方も4月から6月にかけて、計15回の実験を実施した。そこで撮影した写真を7月から9月にかけて画像解析を行い,変形の変位速度やせん断歪みを定量化した。10月と11月には、論文を執筆し、帰国直前に共同研究者らと草稿を共有した。滞在中は基本的に2週間に1回のペースで共同研究者らとミーティングを行い、進捗状況や結果の解釈などを議論した。研究の具体的な成果には、(1)通常の付加作用は一定の波長を持つ周期的なプロセスであり、その過程では付加体下のプレート境界における上盤と下盤のカップリングの割合が時空間的に変化すること、(2)付加する堆積物内に含まれる弱層の数が増えても付加周期の波長は保たれるが、付加体内の地質構造や断層ネットワークは複雑になること、(3)弱層に不連続がある場合、付加周期の波長は乱れ,順序外衝上断層の活動が顕著になること、などがある。論文の原稿は、早期の投稿を目指して、共同研究者らとリバイスを行っている。
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