研究課題/領域番号 |
19KK0360
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
阿部 貴美 岩手大学, 理工学部, 助教 (20786420)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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キーワード | シンチレーション放射線検出器 / 電子スピン共鳴 / 酸化亜鉛 / 光導電型UVセンサ / 溶融塩法 |
研究実績の概要 |
本研究は、ESRによるZnO単結晶基板の欠陥解析およびZnO単結晶基板を用いた光導電型ZnO-UVセンサと、溶融塩法により合成したYAP:Ce粉末を組合わせた「YAP:Ceシンチレーション放射線検出器」を目的としている。 今年度は、ZnO-UVセンサ上にYAP:Ce薄膜をスパッタ法により成膜し、放射線検出器として動作するかを検討した。YAP:Ce薄膜自体は問題なくZnO-UVセンサ上に成膜できたが、成膜の際に生じるプラズマがZnO-UVセンサ表面にダメージを与え、ZnO-UVセンサの特性が劣化してしまい、放射線検出器として機能しないことが確認された。成膜条件等を細かく検討したが、スパッタ法を用いたYAP:Ce粉末の薄膜化は難しいと判断し、紫外線透過樹脂にYAP:Ce粉末を混合し、ZnO-UVセンサを樹脂封止する方法を試みた。結果、ZnO-UVセンサの特性が劣化することなく、放射線検出器として機能することが確認された。ただし、樹脂封止よりZnO-UVセンサの光電流が減少してしまう課題があるため、紫外線透過樹脂とYAP:Ce粉末の最適な混合比の検討がさらに必要と考えている。また、樹脂硬化の際に加熱処理が必要となり、この加熱処理がZnO-UVセンサにおよぼす影響を把握しきれておらず、更に検討が必要と考えている。 ESRによるZnO単結晶の分析はサスカチュワン大学で実施を予定していたが、2022年度はCOVID-19の感染状況を鑑みて断念した。ESRによる分析は2023年度に10ヵ月間サスカチュワン大学に滞在して実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も引き続きCOVID-19感染拡大状況を鑑みてサスカチュワン大学への滞在を断念したため、予定していたESRによるZnO単結晶の分析が進まなかった。ただし、本学で実施している放射線検出器の作製は大きな問題なく進んでいるため、研究全体ではやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はサスカチュワン大学へ10か月間の滞在を予定しており、ESRによるZnO単結晶の分析が一気に進むと予想している。 放射線検出器は、スパッタ法によるYAP:Ce層とZnO-UVセンサの堆積条件を検討するのに予定以上に時間を要し、当初の目的としていたデモ機の作成まで至らなかった。スパッタ法ではなく樹脂封止により放射線検出器として機能することが確認されたので、今年度は樹脂封止を用いたデモ機の完成が目標である。
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