研究課題/領域番号 |
19KK0362
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小森 大輔 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50622627)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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キーワード | 流木流出 / 斜面崩壊 / 気候変動 / 生物多様性 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
今年度は、気候変動も考慮した流木流出統合モデルへの高度化を進め、河川生物多様性評価への応用に向けて現地調査および検証データの整備を進めた。 モデリング班に関しては、2013年に中国四川省成都市都江堰で発生した斜面崩壊災害を対象に基課題で開発した斜面崩壊物理モデルを適用し、良好な予測精度が得られたことを検証した。さらに、既往の土層厚分布推定モデルを結合・高度化した結果、斜面崩壊物理モデルの予測精度は土層厚を均一で与える場合よりも良い性能を示した。一方で、モデルで予測された抵抗力が小さい箇所において、駆動力を過小評価していることが推察された。実際は斜面崩壊していることより推計した土層厚より大きい土層厚である可能性が推察されるため、現地調査を行い、土層厚分布の推定精度を検証することが今後肝要であると考える。 生物多様性班に関しては、海外共同研究者がこれまでに生物多様性調査研究を実施してきた流域(Dove川流域)を対象に、特に河道内での流木の堆積状況に着目して、流木発生-堆積・移動-流出現地調査を実施した。流域全体にて約30箇所の堆積流木が測定され、下流域では一部の堆積流木は生態系のHabitatとして人為的設けられていた。次に、基課題で開発した流木流出統合モデル、HSI(Habitat Suitability Index)モデルおよびSEM(Stream Evolution Model)の適用に向けて、降水量データ、モデルパラメータおよび検証データを整備し、河川温度および河川環境に関して解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ノッティンガム大学中国校の海外共同研究者と基課題で開発した斜面崩壊物理モデルに土層厚分布推定モデルを結合・高度化し、中国四川省成都市都江堰で発生した斜面崩壊災害への適用をオンラインで連携して進めるとともに、ノッティンガム大学イギリス校に渡航し、海外共同研究者とともに河川生物多様性評価の現地調査および検証データの整備と解析を進めた。 モニタリング班に関しては、高度化した斜面崩壊物理モデルを中国四川省に適用した結果、良好な予測精度を示した。また、基課題にて降水強度の大きい南日本では流木流出統合モデルの予測精度は良好でなかったケースが多く、流木流出特性が2つ以上存在することが推察されたため、3段型貯留関数モデルへの改良を行なった。一方で、Covid-19パンデミックのため来年度に計画していた対象地域の山地渓流での合同現地調査に向けて海外共同研究者に流木流出事例の事前調査を進めた結果、ダム貯水池に滞留している流出流木量のデータの取得が困難であることがわかった。現在、ノッティンガム大学マレーシア校に所属する海外共同研究者の協力研究者を加え、熱帯に位置し降水強度の大きいマレーシアでの流木流出統合モデルの適用可能性を検討している。 生物多様性班に関しては、基課題で開発した流木流出統合モデルを日本の対象流域である名取川流域に適用した。現在、HSIモデルとの結合に取り組んでいる。また、適用する英国での対象河川として海外共同研究者がこれまでに生物多様性調査研究を実施してきたDove川流域を選定し、河川生物多様性評価の現地調査および検証データの整備を進めた。そして、河川温度および河川環境に関して解析を進めた。現在、Global Change Biologyに共著論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、モニタリング班は、ノッティンガム大学中国校に渡航し、海外共同研究者とともに流木流出の現地調査を行う。高度化した流木流出統合モデルの適用試験に関しては、中国四川省もしくはマレーシアの河川流域に適用することを目指す。両対象流域で難しい場合は、降水強度の大きい南日本に位置するダム流域を対象としてモデル検証を進める。この研究成果に関して、海外共同研究者と共同で国際論文を執筆する。 生物多様性班に関しては、日本の対象流域である名取川流域を対象に、流木流出統合モデルへのHSIモデルの結合を完了する。英国の対象流域であるDove川流域を対象にモデル検証を行い、研究代表者の既往研究で用いた,地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF; http://www.miroc-gcm.jp/~pub/d4PDF/index.html)の将来予測値の確率降水量を用いて、名取川流域およびDove川流域における流出流木量およびその将来予測を行う。これらの研究成果に関して、海外共同研究者と共同で国際論文を執筆する。
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