研究課題/領域番号 |
19KK0367
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
野崎 貴裕 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20734479)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2021
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キーワード | 近接覚センサ / 力センサ / 平面アクチュエータ / 動作解析 |
研究実績の概要 |
世界的な高齢化の進行を背景に、脳血管障害によって神経症状を患い、長期の後遺症に苦しむ患者の数は増加の一途を辿っている。運動麻痺や感覚障害、言語障害など脳血管障害の後遺症に苦しむ患者は日本国内だけでも300万人以上が存在すると言われており、早急な対応が求められている。こうしたなか、近年の神経科学の成果が新たな突破口を開こうとしている。これまで脳血管障害によって損傷を受けた中枢神経系は回復が困難であると考えられてきた。しかし、脳や神経には外部からの刺激に呼応して、損傷した脳領域の機能を代替する新たな神経回路が生成される性質(=可塑性)が存在することが明らかとなってきた。1998年になり、米国マサチューセッツ工科大学のHermano Igo Krebs氏らにより、ロボット工学を積極的に取り入れたニューロリハビリテーションとしてRobot-aided neuro-rehabilitationの概念が提唱された。Robot-aided neuro-rehabilitationでは、ロボットマニピュレータに仮想的な剛性、粘性、慣性などの機械特性(=機械的インピーダンス)を持たせることによって、患者に物理的な負荷を与え、ニューロリハビリテーションにおける運動訓練の効果を促進することが可能となる。本年度では、力入力型のタスクを対象に、Discrete Movement、Rhythmic Movement、Target Transitionの3種類の測定試験を実施し、人間の運動生成原理の解明に取り組んだ。また、距離、角度、力を同時に測定可能な新たな近接覚センサの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Discrete Movement、Rhythmic Movement、Target Transitionの3種類の測定試験を実施した結果、「人間が発生させ得る力の微分値は十分に大きく、応答速度は視覚情報に起因すること」「人間はわずかに先の動作を予想し、動作の改善を図っていること」「力の微分値に関して重ね合わせの法則が成立すること」等が成立する可能性が示唆された。また、距離、角度、力を同時に測定可能な新たな近接覚センサの開発については、試作機の開発をすでに完了し、国際学術論文誌への投稿を行った。さらに、本センサに関する会議発表を行い、電気学会の本部表彰を受賞するに至った。このように当初の想定を上回る進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
当初義手での活用を目的として基課題において開発に成功した「身体の任意の部位の動作と任意の部位の知覚とを対応付ける力触覚代替と動作代行の技術」をニューロリハビリテーションの分野へと大きく発展させ、神経回路の生成に活用する。Robot-aided neuro-rehabilitationの研究を世界的に牽引し、膨大な量の臨床データと知見を有する米国マサチューセッツ工科大学Hermano Igo Krebs氏との国際共同研究の体制を継続し、研究開発を推進する。特に本年度では、力入力型のタスクを対象に実施した、Discrete Movement、Rhythmic Movement、Target Transitionの3種類の測定試験の結果を解析し、人間の運動生成原理の解明を進める。また、距離、角度、力を同時に測定可能な新たな近接覚センサについては、センサ応答を用いたフィードバック制御系の構築に取り組む。さらに、本測定原理を拡張し、スラスト方向に加わる力情報をも取得可能な機構を検討する。
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