本研究では、廃水処理に関与する微生物群およびそれらの代謝を明らかにすることを目的の1つとしている。基課題研究で、廃水処理汚泥中には普遍的だが存在率が少ない微生物群が存在することを明らかにした。これらの微生物群の代謝機能をメタゲノム解析により解析しようとした場合、解析に十分なクオリティのゲノムビンの構築が通常のメタゲノム解析では困難である。しかしながら廃水処理微生物群を包括的に理解するためには、それらの微生物群を無視することはできない。そこでそれらの微生物群のゲノムビンを獲得し、ゲノム情報に基づいた代謝機能を解明するために、標的とする微生物群のシーケンスデータ回収量を増やす方法について検討を行った。存在量が少ないとはいえ、サンプル間によってその割合が大きく変わるため、まずは標的とする微生物群が多く存在しているサンプルを選定した。下水および産業廃水を処理するバイオリアクターからサンプリングした汚泥を、アンプリコンシーケンシングにより解析し、汚泥内に存在する微生物群の相対存在率を求めた。その結果、一部において他よりも高い相対存在率を示すサンプルが見られたため、これらのバイオリアクター内の汚泥を標的として実験を進めることとした。次に、シーケンス解析においてより多くのリード数を得るための前処理方法について検討を行った。前処理方法の詳細については、現在も検討中であるため詳細は割愛する。この前処理方法により、これまでゲノムビンを構築できなかった様々な微生物群についても代謝機能を推定することが可能となり、廃水処理汚泥内での役割を解明できるようになると考えられる。
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