研究課題/領域番号 |
19KK0380
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田井 明 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20585921)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2022
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キーワード | 河口干潟 / 土砂輸送 / アサリ / ホトトギスガイ |
研究実績の概要 |
2016年4月の熊本地震により,白川流域では多数の土砂崩壊が発生し大量の土砂が河道に流入した.熊本地震によって河道に流入した土砂は1シーズンで海域まで到達しないものも多く,影響の把握には継続した調査が必要である.そこで本研究では,地震直後から数年間の土砂の堆積状況とアサリの生息状況の長期的な変動要因の把握を目的とし,河口干潟での現地調査及び白川の河川流量と二枚貝の生息密度の変化を解析した. 白川河口域で実施した地盤高の測量結果より,毎年,出水期に地盤高が上昇した後に,冬季の波浪等によって堆積土砂が沖へと排出され春まで地盤高が低下する季節変動をしていることが分かった.また、出水直前の地盤高が年々低下傾向であり,熊本地震による土砂堆積の影響が徐々に小さくなっていることが分かった.毎年の出水直後に観測した地盤高の推移から2017年から2019年にかけて地盤高が減少しているが,これは2017年以降に大規模な出水がなく,河道内の堆積土砂の減少や干潟上堆積土砂が沖へ排出され続けたことに起因するものであると考えられる. 白川の流量の変化がアサリの生息密度に及ぼす影響を評価するため,白川河口の3地点で熊本県により毎年8月に行われた二枚貝(ホトトギス貝・アサリ)の生息密度の長期変化と,白川の流量の変化と相関が高い白川上流の観測点における降水量の長期変化を比較した.全年を通して,降水量が月1000㎜を超える比較的大規模な出水があった年はアサリの個体数が低い値にとどまっており,白川の大規模な出水に伴う土砂の供給及び堆積により,アサリの生息環境が脅かされていると考えられる.2010年以降は,小規模な出水の年にホトトギス貝が爆発的に増加し,対照的にアサリの生息密度は低いまま停滞している。これは、ホトトギス貝が干潟面に形成するマットによるアサリ生息環境の悪化が原因と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は当初の計画では,共同研究先の英国Bangor大学に半年程度渡航し,数値モデルの共同開発を実施する予定であったが,コロナウイルス感染拡大の影響で渡航自体が大学から禁止されたため,その面での研究の進展がほとんどなかった.国内の干潟での研究も5月の観測や中津干潟での現地観測が実施できなかったため,研究実績の概要に示したように一定の成果が出ているものの,全体的には少し遅れていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度,状況次第では渡航し,共同研究を進めることを考える.もし,難しい場合でも,オンラインでの打ち合わせなどを密に行い,共同研究を進め,数値モデルの開発のスピードをあげていく予定である.国内の現地観測は初年度よりは多く実施できるため,データを積み上げて成果を出していく予定である.
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