研究実績の概要 |
軸索起始部(AIS)は、活動電位の発生部位として神経出力の決定に関わり、神経可塑性の起点となるだけでなく、その異常は神経疾患や精神疾患の原因になる。本課題は、AISの可塑性に関わる分子基盤を明らかにするため、特にドーパミン受容体の一種DopEcRに着目し、機能解析することを目的としている。
当該年度は、無事に渡米を果たしアイオワ大において研究滞在を開始することができた。前年度までの予定どおり、まず神経芽細胞の初代培養系の習得に取り組んだ。この系では、特定の発生段階の胚由来神経芽細胞の細胞質分裂をサイトカラシンBによってとめ、巨大かつ多核の神経芽細胞を作製する(Wu et al., J Neurosci. 1990)。この「巨大培養ニューロン」は、細胞体が10μm以上に成長し、軸索や神経分枝、糸状偽足が広く大きく伸張するという形態的特徴を持つが、それが十分再現可能であることがわかった。また、この培養細胞を共焦点レーザー顕微鏡下で観察することで、光学限界に近い超高解像度で単一細胞の形態的細部の特徴を可視化できることが分かった。そこで、DopEcR-Venusトランスジェニックショウジョウバエにより、単一巨大培養ニューロン上のDopEcR分子の可視化を試みた。その結果、多くの細胞がDopEcRを発現すること、また細胞体から突出する軸索の基部、すなわち“軸索起始部”様領域にDopEcRが局在することを見出した。興味深いことに、同じような軸索領域に電位感受性ナトリウムチャネル(NaV)が集積することも見出している。これらの成果を受け、現在、パッチクランプ法による細胞膜電流の測定を巨大培養ニューロンから行うべく、セットアップ中である。
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