研究課題/領域番号 |
19KK0389
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
持丸 華子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (90462861)
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研究期間 (年度) |
2020 – 2023
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キーワード | 海洋微生物 / Atribacterota / 嫌気培養 / メタン生成 |
研究実績の概要 |
Atribacterota(旧Atribacteria)門細菌は、世界各地の油ガス田やメタンハイドレート、海洋底泥に数多く生息することが知られているが、それぞれの環境で優占する同門の細菌はほとんど分離同定されておらず、その環境中における生態は未知である。これらの環境は微生物によるメタン生成が起きていることが想定される環境であり、メタン生成アーキアに基質を供給する重要な細菌であることが予想される。Atribacterota門細菌には海洋底泥や油田など、異なる環境ごとに異なる系統の細菌が存在していることが知られている。本研究では、Atribacterota門細菌の生態解明のため、油ガス田または海洋それぞれの環境で検出されている系統に含まれるAtribacterota門細菌およびその関連微生物の分離同定を行うことを目的としている。 本研究は、海洋の未培養微生物培養の第一人者であるハワイ大学ハワイ海洋生物研究所のMichael S. Rappe教授と共同で行った。今年度はRappe教授だけでなく、ハワイ・パシフィック大学のOlivia Nigro准教授とも共同で研究することにより、深海4000m、5000m、6700mの海洋底泥および熱水噴出口の試料を用いて培養を行った。Atribacterota門細菌をターゲットにした培地を含めて、25種類の培地を作成し、25℃または65℃でそれぞれ嫌気的に培養を行った。複数の培地で濁度が見られ、顕微鏡下で様々な形態の微生物が生育していることが確認された。25℃または65℃の培養温度それぞれで生育が見られた試料の一部についてゲノム解析を行った。その結果、高熱性アーキアであるThermococcus、高熱性のメタン生成アーキアであるMethanothermococcusが少なくとも培養できていることが明らかになった。また、日本のガス田から単離したAtribacterota門細菌について、その性質の同定を行った。この細菌にはゲノムDNAを包む細胞内膜があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハワイ・パシフィック大学のOlivia Nigro准教授と新たに共同研究を行えたことで、当初の計画にはなかった、深海4000m、5000m、6700mの貴重な試料を用いて培養を行うことができた。また、油ガス田のAtribacterota門細菌についてその性質を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
深海4000m、5000m、6700mから培養できた微生物について、昨年度は一部しか解析できなかったため、その残りについてゲノム解析を行う。また、生育した新規微生物について単離を試みる。当初の計画で採取予定であったが、コロナによる航海の遅延で採取できなかった北東太平洋の Juan de Fuca 海嶺付近の試料を来年度採取し、培養を行うことを計画している。
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