Atribacterota(旧Atribacteria)門細菌は、世界各地の油ガス田やメタンハイドレート、海洋底泥に数多く生息することが知られているが、それぞれの環境で優占する同門の細菌はほとんど分離同定されておらず、その環境中における生態は未知である。これらの環境は微生物によるメタン生成が起きていることが想定される環境であり、メタン生成アーキアに基質を供給する重要な細菌であることが予想される。Atribacterota門細菌には海洋底泥や油田など、異なる環境ごとに異なる系統の細菌が存在していることが知られている。本研究では、Atribacterota門細菌の生態解明のため、油ガス田または海洋それぞれの環境で検出されている系統に含まれるAtribacterota門細菌およびその関連微生物の分離同定を行うことを目的としている。 本研究は、海洋の未培養微生物培養の第一人者であるハワイ大学ハワイ海洋生物研究所のMichael S. Rappe教授およびハワイ・パシフィック大学のOlivia Nigro准教授、ハートウィック大学のStephanie Carr准教授と共同で行った。 本年度は、当初の計画で使用する予定であった Juan de Fuca 海嶺付近の試料を採取して培養を行った。また、国内ガス田からも再度試料を採取し培養を行った。Juan de Fucaからは現地で優占しており、ウイルスを宿すことが示唆されている古細菌であるArchaeoglobusの分離に成功し、Olivia Nigro准教授がウイルスの研究を進めている。Atribacterota門細菌についいては、以前高温の油田で培養に成功した基質とは別の基質で国内ガス田試料から集積に成功した。このことから、環境中におけるメタン生成菌との関係性および生態について推測することができた。
|